MSP (マネージドサービスプロバイダー)とは?メリットなど基礎から解説

近年、「MSP」(マネージドサービスプロバイダー)という言葉を耳にする機会が増えています。ITインフラの進化やクラウドサービスの普及に伴い、システム運用の形態も大きく変化しており、外部のプロフェッショナルに一部または包括的な運用管理を委託する流れが一般的になりつつあります。
本コラムでは、MSPの基本的な概要やサービス内容、導入メリットや選定時のポイントなどを紹介します。
目次
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01.MSPとは?
MSPの概要
MSP(Managed Service Provider)とは、企業が抱えるITシステムの監視や運用、保守など、さまざまな業務をアウトソーシングされている外部サービス事業者のことです。
たとえば、自社サーバーやクラウド環境に関する監視から、障害対応、セキュリティ対策に至るまで、幅広いサポートを提供するのが特徴です。企業によっては、一部の業務だけを委託し、その他は自社IT部門で担当するというハイブリッドな形態も見られます。
MSPは、ハードウェアやソフトウェアのライセンスなど「モノ」を販売・提供する業者ではなく、IT運用やサポートといった「サービス」を継続的に提供する存在です。従来のように「導入したIT資産を自社内だけで抱え込み、すべてを管理する」のではなく、「必要な作業を外部の専門家に任せる」ことで、社内のリソースをより重要な業務(コア業務)に集中させることができます。
MSPが注目されている背景
企業がMSPを活用する背景には、主に以下のような要因があります。
(1) IT環境の高速化・複雑化
クラウドの普及やIoTデバイスの増加などに伴い、企業が扱うIT環境はますます複雑になっています。システム構成の多様化により、自社だけで管理するには高度な知識・スキルが必要です。限られた人数で全方位的な対策を行うことは難しく、専門家の力が不可欠といえるでしょう。
(2) 人材不足の深刻化
IT人材の確保は世界的な課題となっており、ビジネスを支えるIT基盤の運用に十分な人員を割けない企業が増えています。オンプレミスやクラウドを問わず、運用スキルを備えたエンジニアを採用・育成し続けるのは容易ではありません。MSPを導入すれば、専門知識を持つチームを外部から活用でき、人材不足を補完できます。
(3) コスト削減や業務効率化のニーズ
企業がシステム障害を最小限に抑えつつ、運用コストの最適化を図ることは非常に重要です。自社内で運用チームを大きく抱え込むと、人件費や研修費などがかさむ可能性があります。MSPであれば、必要に応じて柔軟にサービス量や範囲を調整できるため、コスト最適化に寄与します。
02.MSPのサービス内容
MSPが提供するサービスは多岐にわたります。企業のニーズや扱うシステムの種類によって、委託する範囲は異なりますが、ここでは代表的なものをご紹介します。
システム監視
最も基礎的かつ重要なサービスのひとつがシステム監視です。サーバーの稼働状況やネットワークトラフィック、リソース使用量などを監視ツールで常時チェックし、障害や異常を早期に検知して通報します。障害の影響範囲を最小限に抑えるためには、リアルタイムの監視や迅速なアラート対応が欠かせません。
障害対応・インシデント管理
システム障害を早期に発見しても、その後の対応が遅れては意味がありません。MSPは障害が発生した際に、原因の切り分けや調査、復旧作業までを迅速に行う組織体制を整えています。また、障害の根本原因を分析して再発防止策を提案するなど、インシデント管理を総合的にサポートします。
セキュリティ対策・脆弱性管理
2サイバー攻撃の手法が高度化・巧妙化するなか、セキュリティ対策はIT運用の最重要課題といえます。MSPはファイアウォールやアクセス制限の設定、OSやミドルウェアの脆弱性パッチの適用確認など、最新の情報をもとに継続的なセキュリティ監視を実施します。さらに、万が一セキュリティインシデントが発生した場合の緊急対応や被害拡大の防止なども担います。
バックアップ・リカバリ
システム障害や人為的ミス、災害などによって重要なデータが失われた場合、企業にとって甚大な被害となります。MSPは自動化されたバックアップ運用や、災害復旧(Disaster Recovery)環境の構築を支援し、必要なタイミングでのリストアやDRサイトへの切り替えを迅速に行えるよう備えます。
運用レポートと改善提案
運用状況を定量的に把握し、課題を可視化することもMSPの重要なサービスです。定期的に作成する運用レポートには、システム稼働率やインシデント件数、セキュリティの検出ログなどが含まれ、経営層や管理部門がIT全体を俯瞰しやすくなります。そのうえで、MSPの専門家が問題点に対する対策や最新の技術動向に基づく改善提案を行い、システムの信頼性と効率を高めます。
03.MSPの導入メリット
MSPを導入することで期待できるメリットは多方面に及びます。ここでは代表的なポイントを挙げてみましょう。
業務負荷を軽減する
自社内のIT担当者や運用チームが行っていた24時間365日の監視や障害対応を、ほぼ完全に外部へ委託できるため、オペレーション負荷が大きく軽減されます。システム障害時もMSP業者が主体的に復旧対応を行ってくれるため、自社内の人手不足や対応遅延のリスクを低下させることができます。
コア業務に注力できる
MSPを活用すれば、日常的な監視や障害復旧などの作業に追われることが減り、IT部門や社内チームは戦略的なデジタルトランスフォーメーション(DX)、新規サービスの企画、システム設計の高度化など、付加価値の高い業務に専念しやすくなります。その結果、企業の競争力向上やイノベーション創出を加速させる助けとなります。
最新の技術やノウハウを活用できる
IT分野は日進月歩で技術が進展しており、新たなクラウド製品やセキュリティ手法が次々と登場します。MSPは多くの顧客環境を相手に日々運用実績を積んでいるため、最新の知見や実践的なノウハウを蓄積しています。自社単独では追いつきにくい専門技術までも、MSPという形で手軽に導入・活用できる点は大きなアドバンテージです。
リスク管理・コスト最適化
システム障害が長引いた場合、復旧にかかる人件費や機会損失、ブランドイメージへの影響などが大きくなります。
MSPの導入で素早い障害復旧が期待できるほか、必要なサービス範囲だけ(「監視だけ任せたい」「障害対応だけお願いしたい」など)を依頼する形にすることで、不要な機能や人員コストを削減し、IT運用コストを最適化できます。
04.MSPの選定ポイント
MSPを導入する際には、一度契約すると長期的に関係が続くことが多いため、慎重な吟味が必要です。以下に例を示しますが、自社の優先度に合わせて比較検討しましょう。
対象のサービス内容
企業によって必要なサポート範囲は異なるため、まずはMSPの提供メニューを確認し、自社の要件との親和性を見極めることが肝心です。たとえばクラウド環境だけを監視対象としたいのか、社内のオンプレミス環境まで含めたいのか、といった点もあらかじめ整理しておきましょう。サービスメニューが豊富なMSPであれば、将来的な環境変更にも対応しやすくなります。
対応体制
24時間365日対応が必要なのか、営業時間内だけで十分なのかなど、自社の求める運用要件を明確にしておきましょう。また、障害発生時の初動対応時間や復旧目標時間が定義されているSLA(サービスレベルアグリーメント)やSLO(サービスレベルオブジェクティブ)も重要です。対応レベルが事前に定められていることで、もしもの時にスムーズにサポートを受けられます。
セキュリティ対策と実績
MSPに運用委託する以上、機密データや重要システムも扱うことになりかねません。そのため、セキュリティ対策の実績や認証取得の有無、インシデント対応の経験などを確認し、信頼できるパートナーかを判断する必要があります。情報漏えいをはじめとした大規模トラブルが発生すると、企業の信頼を大きく損ねる可能性があるため、十分に注意しましょう。
契約形態とコスト構造
MSPによっては、基本的な監視費用と追加オプション費用が分かれている場合や、リソース使用量に基づく従量課金制を採用している場合など、多様な料金プランが存在します。コストバランスを踏まえながら、契約期間の柔軟性や解約時の違約金の有無などを事前に確認し、長期的な視点で予算に合ったMSPを選ぶことが重要です。
継続的な改善
ITの技術や業界のトレンドは、早いスピードで変化しています。それらを念頭に入れて、継続的に改善提案を行い、企業が競争力を維持するためのサポート力のあるMSPを選定することが重要です。企業が置かれているビジネス環境を的確に把握し、事業拡大と品質向上に向けて、伴走できるMSPが必要と言えます。
05.まとめ
MSPは、企業のIT運用を専門家へ委託し、業務負荷を軽減するだけでなく、最新の技術やノウハウを取り入れるための有力な選択肢です。IT人材の不足やシステムの複雑化によって内製化が難しくなっている現代において、MSPは企業のコア業務への集中を促し、セキュリティリスクや障害リスクを最小限に抑える役割を担います。
当社では、お客さまのクラウドシステムを支える「リモート監視・運用サービス」をご提供しています。
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