システム運用とは?重要性から保守との違い、運用方法の種類などまとめて解説

システム監視・運用

現代のビジネス環境において、システム運用は必要不可欠であるものの、重要性や種類、具体的な業務内容など正しく理解されていないケースが少なくありません。今回はシステム運用について主に取り上げ、システム保守との違いや運用方法など基礎から解説します。

01.システム運用とは?

システム運用の概要

システム運用とは、情報システムやITインフラの安定した運用と管理を行うプロセスを指します。主な目的は、システムが常に正常に稼働し、サービスを利用しているユーザーや提供している企業のニーズに応えることにあります。システム運用では、システムのパフォーマンスを監視し、異常や障害を早期に検知、その後、迅速な対応と復旧作業を行うことを基本とします。
また、定期的なアップデートやパッチ適用を行い、セキュリティや性能の向上を図ります。災害時や障害時の実データ損失に備え、データの定期的なバックアップを行い、システムの設定や運用手順、トラブルシューティングガイドなどドキュメントの整備も行います。
システム運用は、企業のIT戦略の一環として重要な役割を果たしており、ビジネスの継続性、効率性を支える基盤となります。

システム運用の種類と業務内容

システム運用にはさまざまな種類・業務内容がありますが、一般的には以下のようなカテゴリーに分けられます。

(1)インフラ運用:
サーバー、ネットワーク、ストレージなどのハードウェアの管理や監視を行います。システムの可用性を確保し、障害発生時の対応を行います。

(2)アプリケーション運用:
ソフトウェアやアプリケーションの運用管理を行います。OSのバージョン管理や、ソフトウェアの脆弱性を修正するためのセキュリティパッチの適用、性能監視などが含まれます。

(3)データベース運用:
データベースの設計と構築から、データベース運用、バックアップ、データベースの不具合発生時のリカバリなどを行います。また、パフォーマンスチューニングやセキュリティ管理も重要です。

(4)セキュリティ運用:
システムやデータのセキュリティを確保するための運用を行います。脅威の監視やインシデント対応、セキュリティポリシーの策定などが含まれます。

(5)ユーザーサポート
ユーザーから問合せを受けるヘルプデスクの設置や、ユーザー向け操作マニュアル・FAQの策定、ユーザー向けの定期的トレーニングを行います。

(6)運用自動化:
スクリプトやツールを使用して、運用作業の効率化を図ります。開発担当と運用担当が密に連携し開発を実現する「DevOps」や、継続的インテグレーション・デリバリー/デプロイメントでソフトウェア開発の最適化を行う「CI/CD」の取り入れも含まれます。

これらの業務は、システムの安定稼働を維持し、ビジネスの継続性を確保するために不可欠です。システム運用は、企業のニーズに応じて効果的に業務を組み合わせて推進します。

システム運用とは?

02.システム運用と保守の違い

システム保守とは

システム保守とは、情報システムやソフトウェアが適切に機能し続けるように、定期的な点検や修正、更新を行うプロセスを指します。
システム保守の主要業務として、システムの故障を未然に防ぐための定期的な点検やメンテナンスが挙げられます。これには、ソフトウェアのアップデートやハードウェアのチェックも含みます。また、システムに不具合やバグが発生した場合、その原因を究明し、修正する作業も重要な業務です。スピーディーにシステムログを含む運用記録などから障害が発生した日時や範囲を特定し、過去障害事例とも照らし合わせ、それら情報を基に最善の復旧方法を決定し、実行します。さらに、新しいOSやハードウェアの導入など環境の変化に対応するための適用保守や、ユーザーのフィードバック情報を元に、定期的に機能追加や効率を向上させるための性能改善もシステム保守の業務となります。

システム運用とシステム保守の違い

システム運用とシステム保守は、情報システムの管理において重要な役割を果たしますが、それぞれの目的や活動内容には明確な違いがあります。

システム運用

システム運用は、情報システムが日常的に正常に機能するように管理・監視する活動を指します。例えば、システムのパフォーマンスや稼働状況のリアルタイムの監視、データ損失に備えた、定期的データのバックアップ、システム利用者からの問い合わせやトラブルに対するユーザーサポート、システムのセキュリティを維持するための管理、システムのパッチ適用やアップデートの実施が挙げられます。

システム保守

システム保守は、システムの機能や性能を維持・改善するためのメンテナンス活動を指します。具体的にはシステムに存在する不具合やバグを修正する作業、ユーザーのニーズに応じた新しい機能の追加や、既存の機能の改善作業、新技術に対応するためのシステムのアップデート、システムに関するドキュメント類を最新の状態に保つ管理といった業務が挙げられます。

まとめると、システム運用は日常的な管理や監視を中心とし、システム保守は機能の維持や改善に焦点を当てています。両者は相互に関連しており、システムが円滑に運用されるためには両方の活動が欠かせません。

システム運用と保守の違い

03.システム運用におけるオンプレミス型とクラウド型

システム運用には、オンプレミス型とクラウド型があります。それぞれの特長について解説します。

オンプレミス型

オンプレミス型のシステム運用とは、企業や組織が自社の施設内にサーバーやネットワーク機器を設置し、そこでシステムを運用する形態を指します。以下に、オンプレミス型システム運用の主な特徴や利点、課題について詳しく説明します。

<特長>

サーバーやストレージなどのハードウェアを自社で所有し、物理的な管理を行います。このため、自社のニーズに応じてハードウェアやシステムをカスタマイズし易い特長があります。データが自社内にあるため、外部からのアクセスを制限しやすく、セキュリティ対策を自社のポリシーに則って実施することが可能です。また、ネットワークの遅延が少なく、システムのパフォーマンスを最適化し易いとも言えます。

<利点>

システムの運用や管理に対する完全なコントロールが可能で、かつ、機密性の高いデータを自社内に保存し、セキュリティが高い運用ができるメリットがあります。金融機関や公共機関などでは、金融商品取引法や個人情報保護法で、データの取扱いや保護に関する要件が定められており、オンプレミスでの運用が推奨、または義務付けられている場合があります。

<課題>

ハードウェアの購入や設置にかかる初期コストが高い点が主な課題です。また、システムの運用に専門の人材が必要で、教育などに工数やコストも発生します。
データのバックアップや災害復旧計画を自社で策定し、実行する必要があるとともに、ビジネスの成長に応じたインフラのタイムリーな拡張が難しいなど、スケーラビリティの点で課題もあります。

<オンプレミス型まとめ>

オンプレミス型のシステム運用は、企業のニーズや業種によって多くの利点を持つ一方で、初期投資や運用負担といった課題も伴います。導入を検討する際は、自社の状況や将来的なビジョンを考慮し、適切な選択をすることが重要です。

クラウド型

クラウド型のシステム運用は、企業が自社のサーバーやインフラを持たずに、クラウドサービスプロバイダーが提供するリソースを利用してシステムを運用する形態です。以下に、クラウド型システム運用の主要なポイントを解説します。

<クラウドサービスの種類>

- IaaS(Infrastructure as a Service): 基盤となるインフラ(サーバー、ストレージ、ネットワーク)を提供。ユーザーは自分でOSやアプリケーションをインストールして運用します。
- PaaS(Platform as a Service): アプリケーション開発のためのプラットフォームを提供。開発者はインフラ管理を気にせず、アプリケーションの開発に集中できます。
- SaaS(Software as a Service): ソフトウェアをインターネット経由で提供。ユーザーはアプリケーションを直接利用でき、インフラやプラットフォームの管理は不要です。

<利点>

初期投資が少なく、必要なリソースだけを使用するため、コストを抑えられます。また、リソースの追加や削減が容易で、需要に応じた柔軟な運用ができ、スケーラビリティの観点でメリットがあります。多くのクラウドプロバイダーは高い可用性を提供し、データのバックアップや冗長化が行われています。さらに、新しいサービスやアプリケーションの展開といった、が迅速なデプロイが可能な点も特長です。

<課題>

データが外部クラウドに保存されるため、オンプレミスに比較すると、セキュリティリスクが存在すると言えます。閉域のネットワークではなく、インターネット接続が不可欠であり、接続が不安定な場合、サービスに影響が出ることにも考慮が必要です。また、運用が特定のクラウドサービスプロバイダーに依存することになり、ベンダーロックインの状態となる点も課題のひとつです。

<主要なクラウドプロバイダー>

Amazon Web Services (AWS)
Microsoft Azure
Google Cloud Platform (GCP)
IBM Cloud
Oracle Cloud

クラウド型システム運用は、柔軟性と効率性を提供し、企業のデジタル変革を支える重要な要素となっています。具体的なニーズに応じて、適切なクラウドサービスを選択することが重要です。

システム運用におけるオンプレミス型とクラウド型

04.ビジネスを成長させるためのシステム運用におけるポイント

ビジネスを成長させるためのシステム運用におけるポイントは、システム導入の前に、ビジネス目標や要件を明確にし、それに基づいた戦略を策定することです。その上で、オンプレミス型かクラウド型かの判断を行い、クラウドの場合、ビジネスに最適なクラウドプロバイダーを選定することが成功の鍵となります。システムの運用に必要なリソース(人員、予算、時間など)を適切に割り当て、なおかつ、セキュリティ対策を徹底し、データ漏洩やサイバー攻撃などのリスクを最小限に抑えることが重要です。これらの実践で得られる成果としては、インフラやシステムの運用コストを削減、柔軟性と拡張性向上、生産性向上、サービスの競争力の強化が挙げられます。

これらの成功要因と、得られる成果を念頭に置く事で、クラウドシステム運用を通じたビジネスを成長させることができます。
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執筆者

TOPPANエッジITソリューション(株) コラム編集室

システム監視・運用、インフラ構築をはじめとした、IT専門企業のTOPPANエッジITソリューションでは、主にシステム運用、基盤構築に関するコラムを発信し、企業にお役立ていただきます。システムのクラウド化、運用のアウトソーシングなどの、ビジネスシーンで活用していいただければ幸いです。