クラウド環境におけるシステム監視の課題と解決策|重要性からポイントまで解説

さまざまなクラウドシステムが登場している中で、そのシステムが常に正常な状態を維持するための監視の重要性が高まっています。本コラムでは、クラウド監視の課題と解決策をメインテーマに、重要性やポイントなどもご紹介します。
目次
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01.クラウド監視におけるシステム監視とは
クラウド環境におけるシステム監視の概要
システム監視とは、コンピュータシステムやネットワークなどのITインフラストラクチャを監視し、正常な状態を維持するための活動です。 AWSやMicrosoft Azureなどクラウド環境におけるシステム監視では、仮想マシンやコンテナ、データベースなど、クラウド上で提供される各種サービスやリソースの監視が必要となります。 また、異常アクティビティや不審なアクセスの監視も実施し、セキュリティインシデントの早期発見と対応を行います。
クラウド環境におけるシステム監視の目的
クラウド環境では、負荷に応じて自動的にリソースを増減させるオートスケーリングが利用されるケースがあり、適切に機能されているかについての監視も行います。 それら、クラウドにおけるシステム監視は、以下の5点を主な目的として実施します。
(1)障害予防と早期発見
システムやネットワークの異常や障害を予防します。異常が検知されれば、迅速に対処することができ、システムの安定性を確保します。
(2)サービスの可用性向上
サービスの可用性を向上させます。障害が早期に発見され、迅速に対処されることで、サービスの中断や停止時間を最小限に抑えることができます。
(3)パフォーマンスの最適化
システムやネットワークのパフォーマンスをモニタリングし、ボトルネックや負荷の高い箇所を特定します。システム全体のパフォーマンス向上により、快適な利用環境が提供されると同時に、万一の障害時のトラブルシューティングが迅速に行えます。
(4)セキュリティ強化
不正アクセスやセキュリティ侵害を検知し、データの漏洩・改ざんや、ランサムウェア攻撃などを未然に防ぎます。
(5)コスト削減
障害や問題を事前に予防することで、システムのダウンタイムや復旧にかかるコストを削減することができます。
クラウド環境におけるシステム監視は、オンプレミスとは異なる、クラウド特有の機能やリスクに対応するために、より綿密な計画と運用を行い、システムの安定性や可用性を高める必要があります。
オンプレミス環境とクラウド環境の違い
システム監視において、システム形態がクラウド型とオンプレミス型では以下のような違いがあります。
オンプレミス環境とクラウド環境における
監視の違い
システム形態 | 監視の目的 | 監視の対象 | 責任の所在 |
---|---|---|---|
オンプレミス環境 | ノード状態を監視 | 物理的なサーバーやネットワーク機器が監視の対象となります。監視ツールはこれらの要素のパフォーマンスや可用性を監視します。 | すべての監視責任がユーザーにあり、組織インフラストラクチャの管理と監視はユーザー責任で実施 |
クラウド環境 | ユーザーに対するサービス提供状態を監視 | 仮想マシンやコンテナ、サーバーレス関数など、クラウド上のリソースやサービスの監視します。 | クラウドプロバイダがインフラストラクチャの管理と監視について部分的な責任を負う。この場合も、アプリケーションのパフォーマンスやユーザーエクスペリエンスについてはユーザーの責任が発生。 |
- Point①
- クラウドネイティブなシステムでは、個々のインスタンスの生死がサービスの提供に影響しない
- Point②
- サービス提供の観点では、インスタンスの死活よりもアプリケーションの負荷やリソース使用状況が重要
- Point③
- アプリケーションの負荷やリソース使用状況を監視し、必要に応じてリソースのスケーリングに連携
02.クラウド環境におけるシステム監視のポイント
システム監視のポイントを、パフォーマンス監視と、セキュリティ管理の観点で解説します。
パフォーマンス監視
パフォーマンス監視ツールを導入して、システム全体のパフォーマンスデータをリアルタイムで収集し、可視化します。
サーバやネットワークなどの特定の数値を個々に監視する手法ではなく、各種数値からITインフラ全体の状態を把握し、パフォーマンス(性能)に影響を与えそうな箇所(対象や値)を可視化・分析します。
監視対象は、サーバの場合CPU使用率、メモリ使用量、ディスクスペースの使用状況などがあり、特定のリソースが過負荷になっていないか、チェックを行います。
ネットワークの場合、トラフィック量や帯域幅を監視し、ネットワークのボトルネックを特定します。特定のネットワーク機器やネットワークセグメントでトラフィックが集中していないかどうか、監視します。
また、負荷テストを実施して、システムやアプリケーションの性能を評価します。これにより、負荷の高い箇所を特定し負荷分散などの対処を行います。
以上の手法により、サーバやネットワークのパフォーマンスをモニタリングし、システム全体のパフォーマンスを向上させることができます。
セキュリティ管理
不正アクセスやセキュリティ侵害の検知を行い、データ漏洩・改ざんや、ランサムウェア攻撃などを防止するための手法やツールについて解説します。
基本的な管理手法として、システムやネットワークのログを監視し、不審なアクティビティや異常なアクセスの検知が挙げられます。
異常が検知されれば、管理者にアラートが発報され、迅速な対処を行います。
また、定期的にシステムやアプリケーションの脆弱性スキャンを行い、セキュリティホールを特定、分析。その結果、修正プログラム(パッチ)の適用や、アクセス制御などの対策を施します。
その結果、修正プログラム(パッチ)の適用や、アクセス制御などの対策を施します。
ネットワーク上の通信を監視し、不正アクセスや攻撃を検知するための侵入検知システムIDS(Intrusion Detection System)や、検知した異常に対して自動的にネットワークを遮断する侵入防止システムIPS(Intrusion Prevention System)を導入します。
IDSが不審な通信や攻撃を検知すると、それに対するアラートが管理者に発報され、IPSで攻撃を遮断するなどの対策を実行し、システムへの被害を最小限に抑えます。
セキュリティインシデント情報や、最新のセキュリティ対策情報の共有により、企業内で、セキュリティ意識を高める活動も重要です。
定期的なセキュリティトレーニングや啓発活動を実施し、社内のセキュリティ文化を醸成します。
以上のように、ツールの導入や活動によってシステム・ネットワークのセキュリティを確保し、適切な監視体制が整えられます。 セキュリティ管理はシステム監視において欠かせない要素であり、常に最新のセキュリティ対策を施すことによって、システムやネットワークの安定性を高めることができます。
03.クラウド環境におけるシステム監視の課題
クラウド環境におけるシステム監視には、いくつかの課題があります。以下に、クラウドの特長も踏まえながら解説します。
(1)ダイナミックな環境
クラウド環境はリソースの追加や削除が容易であり、インフラストラクチャがダイナミックに変化します。このような環境では、オンプレミスで実施していた監視ツールでは、リソースの追跡や監視が困難になる場合があります。
(2)多層化された環境
クラウド環境では、仮想化技術やコンテナ技術を活用した多層化されたシステムが一般的です。これにより、システム全体を包括的に監視することが難しくなります。
(3)共有リソースの利用
クラウド環境では、複数のテナントが同じ物理リソースを共有して利用するため、他のテナントの影響を受ける可能性があります。
このため、自身のリソースの監視だけでなく、他のテナントからの影響も考慮する必要があります。
これらの課題を克服するためには、クラウド環境に特化した監視ツールの活用、自動化された監視プロセスの導入が重要となります。
これらに対応することで、安定した運用が実現します。
04.クラウド環境におけるシステム監視の課題解決策
クラウドシステムの監視では、APM(Application Performance Monitoring)の導入が解決策のひとつになります。
APMの導入により、アプリケーションやコードに潜むパフォーマンスの問題を即座に特定して対処する事ができます。
APMでは、アプリケーションの内部動作やコンポーネント間の相互作用をモニタリングし、パフォーマンスをリアルタイムで可視化します。
遅延や障害があった場合、そのボトルネックやリソースの過負荷など、問題の根本原因を特定、情報を収集し、対処を可能にします。
また、ユーザーエクスペリエンスの低下が検出された際は、開発者がそれらを分析し、改善策を見つけます。
さらに、クラウド環境ではアプリケーションのスケーラビリティが重要となるため、APMは、アプリケーションの負荷状況を監視、スケーリングの必要性を判断するための情報を提供します。
適切なスケーリング戦略を実践することで、アプリケーションのパフォーマンスと可用性を確保することができます。
当社「リモート監視・運用サービス」は、国内外で実績が豊富なAPMツール「Datadog」を標準装備。
エンジニアやオペレータはツールの操作に習熟しており、クラウドシステムに最適な、監視・運用サービスを提供しています。
当社のAPMに対応したサービスにより、お客さまのクラウドシステム運用のさまざまな課題を解決します。
リモート監視・運用サービスの特長
- 24時間365日、国内最高水準の高いセキュリティを誇るデータセンター拠点から監視・運用サービスを提供
- 50年にわたるシステム運用実績に裏付けられた、ITエンジニアとオペレータによる高品質のサービスを提供
- クラウドファーストの時代に対応。お客さまのニーズに応じた、最適な監視項目の提案など、高い柔軟性を有しています。

執筆者
TOPPANエッジITソリューション(株) コラム編集室
システム監視・運用、インフラ構築をはじめとした、IT専門企業のTOPPANエッジITソリューションでは、主にシステム運用、基盤構築に関するコラムを発信し、企業にお役立ていただきます。システムのクラウド化、運用のアウトソーシングなどの、ビジネスシーンで活用していいただければ幸いです。