システム運用・保守契約の5つの注意点|アウトソーシングで意識すべき事項

システム運用・保守・管理を外部に委託する企業が増えていますが、トラブルもまた増加しています。本コラムでは、システム運用・保守のアウトソーシング先との契約において、注意すべき観点をまとめて解説します。
目次
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01.システム運用・保守契約の注意点①要件定義の明確化
業務範囲の具体的な定義
システム開発は完了している状態で、システム運用をアウトソーシングする際の要件定義フェーズでの業務範囲・対象の具体的な定義には、以下のポイントが挙げられます。
(1)業務範囲の明確化
アウトソーシング先に対して、具体的な業務範囲を明確に定義します。運用するシステムやアプリケーション、運用時間の範囲(24時間体制か、平日のみかなど)、監視やトラブルシューティングの範囲などを明確にします。
(2)業務プロセスの定義
アウトソーシング先と委託元企業間の、業務プロセスを明確に定義します。運用業務のフロー、依頼する作業内容や、障害発生時の通知や報告の仕組みなどを共有し、円滑な業務遂行を図ります。
(3)コミュニケーション手段の確立
アウトソーシング先との円滑なコミュニケーションを確保するために、定例会議や報告書の提出頻度、連絡先の確認など、コミュニケーション手段の定義が必要です。
(4)業務変更管理の手順
システム運用の業務の変化に対して、業務変更管理の手順を明確に定義します。変更のリクエスト手順、承認フロー、テスト手順などを双方協議の上決定し、変更が適切に管理できるようにします。
KPIの設定と期待する成果
要件定義フェーズでのKey Performance Indicator(KPI)の設定と期待する成果について、以下のようなポイントが考えられます。
■KPIの設定
(1)応急対応時間
システム障害が発生した際の、障害の重要度ごとの応急対応時間の設定が重要です。例えば、重要度の高い障害には30分以内に対応するなどの取り決めです。
(2)システムの可用性
システムの稼働時間やダウンタイムを最小限に抑えるための可用性のKPIを設定します。次章で詳しく説明します。
(3)問題解決率
発生した問題や障害に対する解決率や回答率などのKPIも設定します。
■期待する成果
上記のKPIの設定を行い、アウトソーシング先が適切な運用を遂行することでシステムの安定性の向上が期待できます。
具体的には、適切なツールやプロセスの導入による作業効率向上や、定期的な評価と、2社間での改善点の共有により、サービス品質の向上を図る事ができます。
また、内製からアウトソーシングすることで、運用コストの削減という成果も期待できます。
要件定義フェーズでの業務範囲の明確化や、適切なKPIを設定することで、アウトソーシング先と委託元間の共通理解が深まり、効果的なシステム運用を実現することができます。
02.システム運用・保守契約の注意点②SLOもしくはSLAの確認
契約時には、アウトソーシング先のService Level Objective(SL0)あるいは、Service Level Agreement(SLA)の内容に留意します。以下に各ポイントについて詳細を解説します。
SLOとSLAの違い
SLOは、サービスレベル目標と訳され、「運用概要書」として企業に提示しているアウトソーシング先もあります。 システム運用に関する目標値が記され、罰則規定もありません。一方SLAは、サービスレベル契約書と訳され、数値未達成の場合の罰則規定を盛り込む事が一般的です。 企業にとっては、SLO、SLAとも達成に向けた評価基準が明確化され、企業のアウトソーシングにおける期待値とすり合わせる事ができます。
応答時間と解決時間の設定
ユーザからの問い合わせに対する最初の返答までの時間を定義します。一般的には数時間から数日程度です。 その上で、問題が発生してから解決されるまでの時間を定義します。 緊急性に応じて、短い時間枠を設定することが一般的です。また、メンテナンスを行う際、何日前に利用企業に通知するか、およびその定性的な作業内容なども盛り込みます。
可用性とパフォーマンスの基準
可用とはシステムやサービスが利用可能である時間の割合で、一般的には、99%以上の可用性を目指します。
また、システムの性能や処理速度など、パフォーマンスに関する基準を設定します。例えば、特定の処理が一定時間以内に完了することなどが含まれます。
SLO、SLAとも、これら数値を盛り込む事が一般的で、契約時には上記のポイントをしっかりと確認し、双方が合意して締結する事が重要です。
03.システム運用・保守契約の注意点③セキュリティ対策の徹底
契約時に留意すべきセキュリティ対策は、以下の項目になります。
データ保護ポリシーの確認
アウトソーシング先がどのようにデータを保護し、取り扱うかを明確に定義したポリシーを確認します。データの取り扱い方法、データの暗号化やバックアップ手順、データの廃棄方法などが含まれます。
セキュリティ監査とコンプライアンス
アウトソーシング先のセキュリティ対策やコンプライアンス状況を定期的に監査するため、その内容を契約時に確認します。 監査結果を報告し、問題点があれば改善を求めることで、セキュリティレベルを維持・向上させることができます。 また、契約先が適切な法規制や規制要件に準拠しているかどうかを確認することも重要です。 特に、個人情報保護法やFISCの安全対策基準などの規定に適合しているかどうかを確認することが重要です。
インシデント対応計画の策定
万一の不具合、セキュリティインシデントに備えて、アウトソーシング先が、適切な対応計画を策定しているかを確認します。 これには、インシデントが発生した際の連絡先や対応フロー、復旧作業の手順などが含まれます。
契約時には以上のポイントを十分に検討し、セキュリティリスクを最小限に抑えた契約を締結することが重要です。
04.システム運用・保守契約の注意点④コストと契約条件の透明性
契約時に注意すべき、コストと契約条件の透明性の各ポイントについて解説します。
初期費用と運用コストの明示
システム運用アウトソーシング契約において、初期費用が発生する場合があり、例えば、システム移行や導入作業に伴う費用の事で、これらの詳細の項目を確認します。 運用コストには、サービス提供の料金やサポート料金、各種システム運用ツールのライセンス料金が含まれます。 運用コストがどのように計算され、どのような項目で組み立てられているか明確化することが重要です。
契約解除条件と違約金
契約期間中に、どのような条件で契約解除できるかを確認します。
例えば、契約違反やサービス品質の低下などが契約解除の条件となる場合があります。
また、契約解除時に支払うべき違約金の金額や計算方法、支払い期限などが明確に定義されているかを確認し、リスクを最小限に抑えることが必要です。
以上のポイントをしっかりと確認し、予期せぬ費用やトラブルを避けるために、契約内容を慎重に検討することが重要です。
05.システム運用・保守契約の注意点⑤継続的な評価と改善
この項目では、主に契約期間中の継続的な評価と改善のポイントについて解説します。
定期的なレビューと報告
契約期間中に定期的なサービスレビューや進捗報告を行います。
それらを通じて、サービス提供の状況や課題を把握し、改善のための方針を検討することができます。
また、報告書を作成し、契約条件の遵守状況、課題や改善提案などを明確に記載することで、双方が合意した上でサービスの品質向上に取り組むことが可能となります。
改善提案とその実施
定期的なレビューを通じて顕在化した課題について、具体的な改善提案を求めます。 双方が協力して問題解決に取り組むことで、サービス品質の向上や効率化が実現します。 改善提案を実行するための計画を策定、実行し目標達成に向けた取り組みを継続する必要があります。
長期的なパートナーシップの構築
契約期間中にお互いに信頼関係を醸成し、アウトソーシング先との協力体制の構築を通じて、双方が共に成長し続けるパートナーシップを築くことが重要です。
双方が共通の目標やビジョンを持ち、それに向けて協力して取り組むことで、より効果的なサービス提供が可能となります。
以上が、継続的な評価と改善のポイントです。
長期的なパートナーシップが築けるかどうかを、契約時点に考慮し、アウトソーシング先を選定する事が重要と言えます。
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執筆者
TOPPANエッジITソリューション㈱ コラム編集室
システム監視・運用、インフラ構築をはじめとした、IT専門企業のTOPPANエッジITソリューションでは、主にシステム運用、基盤構築に関するコラムを発信し、企業にお役立ていただきます。システムのクラウド化、運用のアウトソーシングなどの、ビジネスシーンで活用していいただければ幸いです。