エンジニア派遣の完全ガイド | 種類ごとの特徴からメリット・デメリットまで

現代のビジネスにおいて、IT技術の進化は企業の競争力を左右する重要な要素となっています。しかし、必要なスキルを持つエンジニアを自社で常に確保し続けることは容易ではありません。そのような課題を解決する手段の一つとして、「エンジニア派遣」が注目されています。
本コラムでは、エンジニア派遣の基礎から種類、メリット・デメリット、さらには具体的な職種まで解説します。
目次
閉じる
-
01
-
02
-
03
-
04
-
05
-
06
-
07
01.エンジニア派遣とは?
エンジニア派遣とは、ITスキルを持つエンジニアが「派遣会社」と雇用契約を結び、「派遣先企業(クライアント企業)」に一定期間派遣されて業務を行う雇用形態です。企業は必要な時期や業務内容に応じて、即戦力となるエンジニアを柔軟に確保することができます。
一般的な正社員採用とは異なり、派遣期間中はエンジニアと派遣先企業との間で直接の雇用契約は締結されません。代わりに、エンジニアは派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業は派遣会社と派遣契約を結ぶ形になります。
この仕組みにより、企業は採用や人材育成、雇用調整などにかかるコストやリスクを軽減しつつ、専門スキルを持つエンジニアに業務を依頼できるメリットがあります。IT技術の進歩とともにエンジニアに求められる専門性や柔軟性が高まる現代において、エンジニア派遣は多様な事業や開発プロジェクトの現場で広く活用されています。
02.エンジニア派遣の種類
エンジニア派遣にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。特に混同しやすい「システムエンジニアリングサービス(SES)」との違いについても、正しく理解することが重要です。
一般派遣(労働者派遣)
最も一般的なのが「一般派遣」です。派遣会社に所属するエンジニアが、派遣先企業で指揮命令を受けて業務を行います。契約期間は限定されており、企業の短期プロジェクトや一時的な人員補充に適しています。
一般派遣は、育児・介護休業中の社員の代替や、繁忙期の増員、専門スキルの一時的な補充など、柔軟な人員確保やコスト調整に向いています。派遣社員の業務内容や就労条件は、労働者派遣法に基づいて厳格に管理されています。
紹介予定派遣
紹介予定派遣は、将来的な直接雇用を目指した派遣形態です。最長6ヶ月の派遣期間中に、派遣先企業とエンジニアがお互いの適性や働きぶりを確認し、期間終了後、双方が合意すれば正社員や契約社員などの直接雇用に切り替わります。
この制度は、採用のミスマッチを防ぎつつ、企業は即戦力かどうかをじっくり見極められるメリットがあります。エンジニア側も、入社前に企業の文化や業務内容を体験できるため、納得した上でキャリアを決定できます。
システムエンジニアリングサービス(SES)との違い
エンジニア派遣とよく混同されるのが、システムエンジニアリングサービス(SES)です。
両者ともエンジニアが派遣先企業に常駐して業務を行う点は共通していますが、契約形態や指揮命令権に大きな違いがあります。
•派遣契約:
派遣会社と派遣先企業の間で「労働者派遣契約」が結ばれます。エンジニアは派遣会社の社員ですが、業務の指揮命令権は派遣先企業側にあります。労働者派遣法に基づき、エンジニアの働く時間や場所、業務内容などが具体的に定められます。
•システムエンジニアリングサービス(SES)契約:
SES事業者と派遣先企業の間で「業務委託契約(準委任契約等)」が結ばれます。この契約では、特定のシステム開発や運用プロジェクトにおける技術サービスの提供を目的としています。
エンジニアはSES事業者の社員であり、業務の指揮命令権はSES事業者側にあります。派遣先企業は日々の業務指示を直接出すことができず、業務進捗や勤務管理もSES事業者側が行います。※なお、多くは準委任契約ですが、請負契約が使われる場合もあります。
この違いを理解することは、企業のニーズや目的に合った契約形態を選択する上で非常に重要です。
03.派遣の対象となるエンジニアの職種
エンジニア派遣では、多種多様なITエンジニアが活躍しています。ここでは、代表的な職種をいくつかご紹介します。
バックエンドエンジニア
Webサイトやアプリケーションの裏側(サーバーサイド)で動作するシステムの開発を担当します。データベースの設計・構築、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の開発、サーバー構築などを担当し、ユーザーからは見えない部分でサービスの安定稼働を支えています。高度なプログラミングスキルやデータベースの知識が求められます。
フロントエンドエンジニア
Webサイトやアプリケーションのユーザーが直接目にする部分(UI:ユーザーインターフェース)や、操作する部分(UX:ユーザーエクスペリエンス)の開発を行います。使いやすくデザイン性の高いインターフェースを構築するために、デザインやユーザー体験への理解も重要となります。
インフラエンジニア
ITシステムの基盤(インフラストラクチャ)の設計・構築・運用を担当します。
サーバー、ネットワーク、ストレージ、データベースなどのハードウェアやソフトウェアの選定、設定、保守を行い、システムの安定性やパフォーマンスを確保します。近年ではAWS・Azure・Google Cloudなどクラウド環境の知識も必須となっています。
アプリケーションエンジニア
業務システムやスマートフォンアプリなど、目的に応じたソフトウェアアプリケーションの企画・設計・開発・テスト・保守を行うエンジニアです。派遣先企業の要件をヒアリングし、それを具体的なシステムに落とし込むスキルが求められます。開発言語やツールはプロジェクトによって様々です。
ネットワーク・セキュリティエンジニア
企業のネットワーク環境やセキュリティ対策の設計、構築、運用、管理を専門とするエンジニアです。社内ネットワークやインターネット接続の安定性を確保し、通信トラブルの解消や、帯域の最適化などを担当します。さらに、サイバー攻撃からシステム・情報を守るセキュリティ対策も重要な役割で、最新の脅威への対応力が求められます。
システム運用管理者/オペレーター
稼働中のITシステムが安定して動作し続けるよう、日々の監視や運用・トラブル対応を行うエンジニアです。システム障害発生時の初動対応や復旧作業、定期的なバックアップ、パフォーマンス監視、ログ解析などを担当します。システム運用手順書の作成や改善にも携わり、安定稼働を継続するうえで欠かせない存在です。
04.エンジニア派遣のメリット
企業がエンジニア派遣を利用することには、多くのメリットがあります。
即戦力の人材を迅速に確保できる
エンジニア派遣の最大のメリットの一つは、必要なスキルを持つ即戦力人材を迅速に確保できる点です。通常の採用活動では、募集から選考、入社までに数ヶ月を要することも珍しくありません。しかし派遣会社には既にスキルや経験を持つエンジニアが多数登録されており、企業の要件に合致する人材をスピーディーに紹介してもらえます。これにより、プロジェクトの立ち上げや急な人員不足にも迅速に対応でき、ビジネスチャンスを逃さずスムーズな事業展開が可能になります。
コスト削減につながる
エンジニア派遣は、様々な側面からコスト削減に貢献します。まず、正社員採用にかかる求人広告費や選考・面接にかかる人件費、入社後の研修費用といった採用コストを大幅に削減できます。また、派遣社員の給与や社会保険手続き、福利厚生の提供などは派遣会社が担うため、企業は人事管理にかかるコストや手間から解放されます。必要な期間だけ人材を確保できるため、固定費となる人件費を流動費化し、経営の効率化を図ることができます。
多様なスキル・経験を持った人材と出会える
自社だけでは獲得が難しい専門スキルや、様々な業界・プロジェクト経験を持つエンジニアと出会える点も大きなメリットです。派遣会社は幅広いコネクションを持ち、最新技術に精通した人材や特定の業界知識を持つエンジニアを抱えています。これにより、自社の課題解決に最適な専門家を短期間でアサインでき、新しい技術や知見を取り入れることができます。
教育・研修の負担軽減
派遣会社はエンジニアに対して独自の教育・研修プログラムを用意していることが多く、エンジニアは常に最新のスキルを習得しています。そのため、派遣先企業が派遣エンジニアに対して基礎的なITスキルや専門知識について大規模な研修を行う必要がありません。これにより教育・研修にかかる時間的・金銭的コストを削減でき、コア業務にリソースを集中させることが可能です。
05.エンジニア派遣のデメリット
エンジニア派遣には多くのメリットがある一方で、いくつか注意すべきデメリットも存在します。これらを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
自社にノウハウが蓄積されない
派遣エンジニアは一定期間で契約が終了するため、プロジェクトで培った知識やノウハウ、特定システムへの深い理解が、派遣期間終了とともに社外へ流出してしまうリスクがあります。特に、長期的に見ると、技術継承や自社独自の専門性の蓄積が難しい点は大きな課題です。対策としては、派遣期間中の積極的な情報共有やドキュメント化を進めることが必要です。
業務知識・社内文化への適応に時間がかかる場合がある
派遣エンジニアは高いスキルを持っていますが、企業特有の業務フローやシステム、独自の社内文化への適応には時間を要することもあります。そのため、初期段階では生産性が一時的に低下したり、コミュニケーション上の齟齬が生じる場合もあります。
オンボーディングを明確にし、既存社員との連携を密にすることで課題を緩和できます。
情報セキュリティ管理の徹底が求められる
外部のエンジニアが自社のシステムや情報にアクセスするため、情報漏洩や不正アクセスといったセキュリティリスクが高まる可能性があります。派遣エンジニアに対するアクセス権限の厳格な管理、VPN接続の義務付け、セキュリティポリシーの徹底した周知、定期的な監査など、万全の対策が求められます。
また、派遣元企業の選定に際しては、情報セキュリティ管理への取り組みや、企業コンプライアンスが確立しているか、という観点で検討することも重要です。
06.エンジニア派遣でおすすめのサービス
当社では、企業の多様なITニーズにワンストップでお応えする「ITエンジニアリングサービス」をご提供しています。本サービスは、お客さまのオフィスやデータセンター(オンサイト)に当社のITエンジニアが常駐し、インフラ構築から運用、業務アプリケーションの企画・開発、24時間365日のシステム監視・運用まで、ITビジネス全体をトータルでサポートします。
また当社は、TOPPANグループの一員として、情報セキュリティ管理への徹底した取り組みや、法令順守のための教育、啓発活動を積極的に行うなど、企業コンプライアンスが確立している点も特長と言えます。
ご要望に応じて、サーバーエンジニア、クラウドエンジニア、ネットワーク・セキュリティエンジニア、アプリケーションエンジニア、システム運用管理者、システムオペレーターといった各分野の経験豊富なエンジニアが、お客さまのビジネス課題を確かな技術力で支援します。
本サービスの詳細については、下記リンクよりご覧ください。
07.まとめ
エンジニア派遣は、今日のIT人材不足という課題に対し、企業が迅速かつ柔軟に対応するための非常に有効な手段です。即戦力となる人材の迅速な確保やコスト削減、多様な専門スキルへのアクセスといった多くのメリットがある一方で、自社ノウハウの蓄積や情報セキュリティの管理など、いくつかの課題にも十分注意し、適切に運用することが重要です。
本コラムが、貴社がエンジニア派遣を導入する際の参考となり、最適なパートナー選びの一助となれば幸いです。
企業のIT戦略における人材確保の選択肢として、当社の「ITエンジニアリングサービス」をぜひご検討ください。