ITエンジニアのアウトソーシングガイド|メリットから注意点まで解説

「社内のシステム開発や運用を、外部の専門家に任せたいが、どこから始めたらいいかわからない」
「エンジニアに依頼したいが、どの業務範囲までお願いできるの?」
DX推進や業務効率化が求められる今、このような課題を抱えた企業は増えています。
本コラムでは、ITエンジニアの外注を検討している企業の担当者向けに、基礎知識からメリット・デメリット、注意すべきポイント、最適なアウトソーシング先の選び方までをわかりやすく解説します。
目次
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01.ITエンジニアのアウトソーシングに関する基礎知識
社内リソースだけではシステム開発や運用プロジェクトを進めるのが難しい場合、ITエンジニアのアウトソーシングは有力な選択肢となります。アウトソーシングと一口に言っても、契約形態や依頼範囲、管理体制など押さえておくべき基本事項があります。
アウトソーシングにおける準委任・請負の違い
ITエンジニアのアウトソーシングをする際、主に「準委任契約」と「請負契約」の2形式があります。
準委任契約
業務遂行自体を依頼し、成果物の納品ではなく"業務を行う労働力"を提供してもらう形態です。
たとえば、システム運用や現場常駐による開発プロジェクトの進行など、工程や仕様変更が発生しやすいプロジェクトに適しています。この場合、成果物の納品責任は必ずしも生じません。
そのため、受託者(委託先)は善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)を負いますが、成果物の完成責任は負いません。
また、準委任契約において委託者(発注側)が受託者に対して直接的に業務の指示や人員のコントロールを行うこと(指揮命令権)はできません。ただし、業務内容の確認や成果確認といったコミュニケーションは行われます。
請負契約
事前に仕様・成果物や納期を明確に定めたうえで、"成果物の納品"に責任を持つ契約形態です。
要件定義が固まった開発業務や、リリースまでの期間・内容が限定された業務に用いられます。
請負契約は、プロジェクト完了時に何を納品するかが明確な反面、業務途中で要件追加や変更が生じる場合は別途契約変更が必要になります。
この契約では、業務の進め方や人員の管理は、基本的に受託者側に委ねられます。
どんな業務をアウトソーシングできるのか
ITエンジニアにアウトソーシングできる業務の範囲は幅広く存在します。
• インフラ基盤の企画・設計・構築
• クラウド環境の構築・移行
• ネットワーク設計、セキュリティ対策、監視運用
• 業務アプリケーションの設計・開発・テスト
• システムの運用管理、障害対応 など
自社の課題やリソース不足に応じて、必要なスキルや経験を持つITエンジニアに依頼することで、幅広い業務がカバーできます。事前に「自社で行う業務」と「アウトソーシングする業務」を仕分けておくことで、最適なアウトソーシングプランを策定しやすくなります。
ITエンジニアのアウトソーシングが活用される主なケース
特定のシステムにおける短中期プロジェクトだけでなく、以下のようなケースでも外注が活用されています。
• 新サービスの立ち上げや既存システムの大規模リニューアルを実施する際、一時的に多くの専門エンジニアを確保したい場合
• 社内エンジニアがコア事業や戦略案件に集中できるよう、日々のシステム運用や保守業務を外部に任せたい場合
02.ITエンジニアをアウトソーシングするメリット
社内で人材を採用・教育するのと比較しても、ITエンジニアのアウトソーシングには多くのメリットがあります。
即戦力の人材を迅速に確保できる
プロジェクト開始が迫っている、急なリソース増強が求められるといった場面で、自社採用では間に合わず困ることも...。
アウトソーシングならば、必要なスキル・経験を持った現場即戦力のITエンジニアに、希望のタイミングで参画してもらえます。特にIT分野では新技術やプラットフォームの更新スピードが速いため、最新技術に精通したプロに直接依頼できるのも大きな魅力でしょう。
コスト削減につながる
社内でITエンジニアを新規採用し、育成するには相応の時間とコストがかかります。また常時フルタイムで人材を確保する必要がないプロジェクト型案件も頻繁にあります。
ITエンジニアをアウトソーシングすることで必要な期間・工数だけ確保できるうえ、「社会保険」「福利厚生」「教育コスト」などの間接費も抑制できます。長期的な固定費の増加リスクも回避でき、経営資源の最適配分につなげられます。
専門性の高い技術・ノウハウを活用できる
クラウドやAI、セキュリティ、データベースなど、IT業界の技術変化は激しく、高度化が進んでいます。すべての分野に精通した自社人材を常時抱えるのは現実的ではありません。しかし、アウトソーシングを活用すれば案件ごとに必要な専門性を持つプロをアサインできるため、質の高いシステム構築・運用が可能になります。
社内コア業務への集中を実現
間接業務や既存システムの運用・保守を外部に任せることで、自社社員は新規プロダクト開発、業務改革、事業戦略の立案といった"コア業務"に集中できます。限られた人的資源を効率よく配分し、企業競争力の強化に直結します。
03.ITエンジニアをアウトソーシングするデメリット
一方で、外部に委託することによるリスクや注意すべき点も存在します。
コミュニケーションコスト増加の懸念
自社社員と外部エンジニアが協働する場合、仕様や社内用語、業務ルールなどの伝達・共有は不可欠です。異なる組織に属するため、意思疎通の齟齬やミスコミュニケーションが発生しやすく、想定外の手戻りや遅延につながることもあります。
特にリモートワークや拠点が遠隔の場合は、文書化や定期MTGなど「可視化されたコミュニケーション」の設計が重要です。
内製力の低下・依存リスク
外部エンジニアに重要業務を継続委託し続けると、自社内部の技術力やシステム運用ノウハウが蓄積されにくくなる場合があります。
この課題は、必要な範囲は自社メンバーが携わり、適切なバランスでアウトソーシング範囲を調整することで解決します。
費用対効果の見極めが必要
一見コスト削減になるように見えても、十分な仕様整理や要件定義をしないままアウトソーシングすると、追加対応や契約変更で想定コストを上回るリスクがあります。特にDXや基幹システム構築のような長期・大規模プロジェクトでは「最初の発注額」だけでなく、変更可能性やアフターサポート費用、プロジェクト管理コストなども見積もって計画を立てることが肝心です。
04.ITエンジニアをアウトソーシングする際の注意点
アウトソーシングを成功させ、期待通りの成果を得るためには、いくつかの重要な注意点を押さえておく必要があります。これらを怠ると、予期せぬトラブルや追加費用の発生に繋がりかねません。
業務範囲を明確にして依頼する
外部のエンジニアに依頼する際は、「業務の範囲」、「具体的な役割分担」、そして「最終的な成果物の定義」などを事前に明確にしておくことが極めて重要です。曖昧な依頼は、後々の認識のズレや、追加費用発生の原因となるだけでなく、プロジェクト全体の遅延に繋がる可能性があります。
成果物のイメージ、品質基準、納期などを細かく指定し、書面で共有することで、発注側と受注側双方で認識を一致させ、スムーズなプロジェクト進行とトラブルの回避に繋がります。プロジェクト開始前に、何をもって「完了」とするのかを具体的に合意しておくことが、成功への第一歩です。
契約書を締結してから実作業に入る
発注内容や業務仕様が固まったら、必ず契約書を交わしてから実作業に入ることが鉄則です。スケジュール、成果物の定義、検収方法、再委託・中途解約時の取り決め、秘密保持など、後になってトラブルにならないように重要事項を網羅しましょう。
特に情報管理や個人情報保護、障害発生時の対処フローなども入念に擦り合わせておくことが必要です。
受け入れ体制を社内で整備する
外部エンジニアが参画しやすく、最大限に力を発揮できるよう社内体制の準備も欠かせません。業務の受け入れやマニュアル整備、コミュニケーションの窓口担当者の選任、定例会議の設定など、外部エンジニアと円滑な関係性を築くためには社内準備も含めてプロジェクト全体を設計しましょう。
コミュニケーションルールの設定
外部エンジニアとの協力を円滑に進めるためには、情報共有や連絡の方法について、あらかじめ明確なルールを決めておくことが重要です。
たとえば、定期的な打ち合わせの開催や、議事録の作成・共有、成果物や作業進捗の報告方法、トラブル発生時の連絡手順(エスカレーションルート)などを具体的に取り決めておきましょう。
こうしたルールが曖昧だと、伝達ミスや認識のずれが起こりやすく、結果的にプロジェクトの遅延やトラブルの原因となることがあります。
05.アウトソーシングするITエンジニアの探し方
具体的にITエンジニアをどのような手段で探したらよいのでしょうか。ここでは、主な"エンジニアのアウトソーシングルート"について整理します。
採用媒体を活用する
IT業界に特化した採用媒体や一般的な求人サイトを活用する方法です。自社のプロジェクト内容や求めるスキル、経験、開発言語などを詳細に明記し、複数の採用媒体を活用することで、ターゲット人材へ広くアプローチすることが可能です。
ただし、応募者の選考から面接、契約交渉、そしてその後の管理まで、すべてのプロセスを自社で行う必要があるため、それなりのリソースとノウハウが求められます。
人材紹介を活用する
専門性の高いITエンジニアを探したい場合や、採用活動にかける自社のリソースが限られている場合には、IT人材に特化した人材紹介会社を利用するのが有効です。人材紹介会社は、人材コンサルタントが企業のニーズをヒアリングした上で、それに合致する適切なスキルや経験を持つ候補者を紹介してくれます。選考プロセスの一部(例えば、書類選考や一次面談など)を代行してくれる場合もあり、効率的な採用が期待できます。
ただし、採用が成立した際には、紹介手数料が発生するのが一般的です。優秀な人材と効率的に出会いたい場合に適した方法と言えるでしょう。
アウトソーシングサービスを利用する
システム開発の全工程、または一部工程を丸ごと外部の専門企業に委託したい場合は、システム開発会社やITコンサルティング会社が提供するアウトソーシングサービスを利用することができます。これらのサービスは、開発チームの組成からプロジェクト管理、品質管理、進捗管理までを一貫して行ってくれるため、自社の負担を大幅に軽減できます。
大規模なシステム開発や、自社に開発ノウハウが少ない場合に特に有効な選択肢となります。
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06.まとめ
ITエンジニアのアウトソーシングは、企業のIT運用や開発業務を加速させるだけでなく、採用難への対応、コスト削減、新技術の活用、業務効率化など重要な経営判断ポイントを担う手法です。メリットが多い一方で、コミュニケーション・品質・契約管理など、細心の注意が必要な側面も存在します。
プロジェクトの目標や要件をしっかりと共有し、お互いの役割を明確にしたうえで協力し合うことが、アウトソーシング活用の成功に直結します。
ITエンジニアのアウトソーシングをご検討の際には、豊富な案件経験と確かな技術力を持つ当社の「ITエンジニアリングサービス」も、ぜひ選択肢のひとつとして視野に入れていただければ幸いです。
企業の成長戦略やIT構想を現実化するパートナーとして、これからも皆さまのお役に立てるサービスを提供してまいります。