ITアウトソーシングとは? 活用例から導入時の注意点まで解説

ITエンジニアリング

デジタルトランスフォーメーション(DX)や業務の効率化が注目される昨今、多くの企業がIT活用に力を入れています。しかし、「自社のIT部門の人材が足りない」「専門知識を持つ人材の確保が難しい」「ITコストが膨らんでいる」といった課題に直面している企業も少なくありません。こうした状況の中で、近年注目を集めているのが「ITアウトソーシング」です。
本コラムでは、ITアウトソーシングの基礎からメリット・デメリット、導入プロセス、導入時の注意点について、わかりやすくご紹介します。

目次

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01.ITアウトソーシングとは?

ITアウトソーシングの概要

ITアウトソーシングとは、企業や組織が自社業務の中でITに関連する分野(例えばシステム開発や運用、ネットワーク管理、セキュリティ対策、ヘルプデスクなど)を、外部の専門業者(ベンダー)に委託する経営手法です。昨今はITが業務基盤となる一方で、多様なテクノロジーや高度な知識が必要とされる場面が増えています。このような背景のもと、ITアウトソーシングは業務効率化や競争力の強化、人材不足の解消など、さまざまな効果をもたらす手段として注目されています。

ITアウトソーシングの形態

ITアウトソーシングにはいくつかの形態が存在します。主なものは以下の通りです。

(1)オンサイト型
専門エンジニアがクライアント企業のオフィスやデータセンターに常駐し、技術サービスを提供する形態です。現場での密なコミュニケーションや、柔軟な対応が可能であることが強みです。

(2)オフサイト型/リモート型
ベンダーが自社拠点外から業務を請け負う形態です。コスト削減や、地域を問わず専門人材を活用できるメリットがあります。

(3)ニアショア/オフショア型
国内や海外の遠隔地(オフショア)に業務委託することで、人件費の抑制や24時間対応を目的とする形態です。特定の業務やプロジェクト単位でよく利用されます。

(4)フルアウトソーシング/部分アウトソーシング
IT業務全体をベンダーに委託する「フルアウトソーシング」と、特定業務(例:サーバー運用のみ、ヘルプデスクのみ等)だけを委託する「部分アウトソーシング」があります。自社の課題や戦略に応じて選択されます。

ITアウトソーシングの委託業務

ITアウトソーシングで委託される代表的な業務は以下のようなものがあります。

    • サーバー・ネットワークの構築および保守・運用
    • クラウド環境の設計・構築・運用
    • セキュリティ対策の計画・実施
    • 業務アプリケーションの設計・開発・テスト
    • システム保守・監視・障害対応
    • ヘルプデスクやユーザーサポート業務
    • ITインフラのアップデートや改善対策立案
    • システム運用に関するドキュメント作成、ルール整備

など、IT業務全般にわたり多様な業務の委託が可能です。近年は、自社に専用のIT部門を持たず、ITアウトソーシングを「仮想IT部門」のように活用する企業も増えています。

ITアウトソーシングが注目されている背景

なぜ今、ITアウトソーシングが強く支持されているのでしょうか。その主な背景は以下の通りです。

IT人材不足の深刻化
IT業界では人材争奪戦が激化しており、自社採用だけでは必要なエンジニアを確保できないケースが増えています。ベンダーの人材リソースの活用は、この課題解決の有効な手段となります。

システムの複雑化・高度化
クラウド、AI、IoTなどの新技術の登場により、IT領域はより専門性を必要とする分野になっています。多様な専門知識を持つベンダーの支援により、安定した業務運用が実現します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進
事業のデジタル化を進めるためには、スピードと専門性が欠かせません。ITアウトソーシングを活用することで、新規事業やサービス開発へのリソース集中が可能となります。

コスト最適化・経営効率化
社内に専任のIT部門を持つより、必要なタイミングやニーズに応じてベンダーに委託することで、固定費が圧縮され、コスト管理がしやすくなります。

このような背景から、多くの企業がITアウトソーシングの導入を検討しています。

02.ITアウトソーシングを導入するメリット

ITアウトソーシングには、さまざまなメリットがあります。自社の課題や事業戦略に応じて最適な活用方法を検討することが重要です。

自社のコア業務にリソースを投下できる

ITシステムの運用・保守やヘルプデスク業務などは企業活動に不可欠なものの、本来のコア事業(製品開発やサービス企画など)とは異なります。ITアウトソーシングを導入することで、社員が本業や注力すべき事業分野にリソースを集中でき、事業の成長や競争力強化につながります。

コスト削減・安定したIT予算管理

専任のIT人材の採用・育成やシステム設備への投資は、企業にとって大きな負担になりがちです。ITアウトソーシングを活用することで、こうしたコストを変動費化でき、リソースを最適に配分できます。必要な時に必要な分だけ委託できるため、無駄のないコストコントロールが可能となり、予算管理も容易になります。

IT関連業務のプロに依頼できる

ITアウトソーシングを通じて、幅広い専門知識や経験を持つベンダーのノウハウを活用できます。急速に進化する技術トレンドにも迅速に対応でき、セキュリティ対策や障害対応といった、失敗の許されない重要な領域も安心して任せられます。その結果、システムの品質向上や安定稼働、トラブル時の迅速な対応などを実現でき、自社だけでは難しい課題の解決が可能となります。

最新技術・ベストプラクティスの導入が可能

外部ベンダーは多数のプロジェクトで培われた知見を持ち、業界標準や最新技術にも精通しています。ITアウトソーシングを利用することで、自社だけでは取り入れにくいノウハウや優れた運用手法(ベストプラクティス)も、いち早く導入することができます。

03.ITアウトソーシングを導入するデメリット

多くの利点がある一方、ITアウトソーシングにはデメリットも存在します。これらのリスクを事前に把握し、適切に対策を講じることが重要です。

自社にノウハウが蓄積されない

業務を外部委託することで、ITシステムの設計・運用ノウハウや障害対応の知見が社内にたまりにくくなります。長期的な視点で見ると、自社運用に切り替えたい場合や、新たなプロジェクトを立ち上げる際に、自社メンバーが十分な知識や経験を持ち合わせておらず、苦労するケースも想定されます。

情報漏洩リスク・信頼性の課題

データの取り扱いやシステムへのアクセス権限をベンダーに委ねるため、情報漏洩リスクが高まる可能性があります。また、ベンダーの管理体制やセキュリティ意識が十分でない場合、信頼性に不安が生じることもあります。
これらのリスクを低減するためには、ベンダー選定時に、情報セキュリティ管理への取り組みや、企業コンプライアンスが確立しているか、という観点で検討することも重要です。

ベンダーロックインの懸念

特定のベンダーに依存しすぎると、将来的にサービスの内容を変更したり、他のベンダーへ乗り換えたりする際に多大なコストや労力が必要になる「ベンダーロックイン」のリスクが発生します。柔軟な契約内容の設定や業務フロー・ドキュメントの標準化、複数のベンダーを組み合わせて活用するなどの対策が求められます。

コミュニケーション・コントロールの難しさ

社外のベンダーと連携して業務を進める場合、社内だけで完結する場合と比べて調整や連絡の手間が増加します。業務要件の誤解や伝達ミスが発生すると、品質や納期のトラブルに発展する可能性も否定できません。円滑な業務推進のためには、定期的な打ち合わせや進捗管理、情報共有の仕組みづくりが必要です。

04.ITアウトソーシングを導入するまでのプロセス

ITアウトソーシングは、単に業務を外部に委託すれば良いというものではありません。事前準備から実際の運用に至るまで、段階的かつ計画的に取り組むことが成功のポイントです。

現状分析・課題抽出

まずは自社におけるIT業務の現状を洗い出して、どの部分に課題や改善余地があるかを整理します。その上で、どの業務をITアウトソーシングで委託すべきか、また、委託範囲をどこまでとするかを明確にします。

要件定義・委託範囲の決定

委託する業務の範囲や求めるサービスレベル(SLA)、作業環境、情報管理方針などを具体的に定義します。この段階で、将来的な業務拡張や、自社内でのノウハウ継承も視野に入れた計画立案が重要です。

ベンダー選定

依頼するベンダーを選定する際は、信頼性・実績・体制・コスト・技術力・情報セキュリティ管理への取り組みなど、多角的な観点から評価を行います。必要に応じて複数のベンダーから提案や見積もりを受け、最適な委託先を厳選しましょう。

契約締結・運用準備

委託内容や責任範囲、成果物、秘密保持、障害時の対応など、重要な事項を明記した上で契約を締結します。加えて、運用開始に向けて社内体制の整備や、情報セキュリティ対策の徹底も欠かせません。

委託業務の運用開始・継続的なモニタリング

契約に基づき、実際の業務運用を開始します。運用を始めた後も、定期的なレビューや実績の確認を行い、課題の早期発見や継続的な業務改善を推進することが重要です。

05.ITアウトソーシングの導入・運用の注意点

ITアウトソーシングを成功させるためには、導入と運用の両面で適切な管理・工夫が欠かせません。

導入時の注意点

目的の明確化:本当にアウトソーシングすべき業務・ニーズを絞り込むことが、成果につながります。自社に「残すべき業務」は何か、見極めが必要です。
ベンダーとの期待値すり合わせ:成果物や運用ルール、SLAなどについて細かく合意し、期待値のギャップをなくすことがトラブル回避につながります。
情報セキュリティ・コンプライアンス管理:契約・運用段階から情報資産管理を徹底し、アクセス制御や秘密保持契約の締結が必須となります。

運用時の注意点

• 継続的なコミュニケーション確保:定例会議や進捗報告、課題共有などの連絡機会を設け、密にコミュニケーションを取れる体制を整えます。

• パフォーマンスモニタリングと評価:KPI/SLA達成度や運用品質、改善提案などを定期的に評価し、必要に応じて委託内容の見直しも検討しましょう。

• ノウハウ共有・ドキュメンテーション:外部に依存しすぎない体制を目指し、ナレッジの蓄積・ドキュメント整備が大切です。社内にも最低限のITリテラシーが必要です。

• ベンダーとの信頼関係構築:単なる「委託先」ではなく、パートナーとしての協業意識を持つことが、問題発生時の迅速解決や長期的な成功につながります。

06.ITアウトソーシングにおすすめのサービス

当社では、企業の多様なITニーズにワンストップでお応えする「ITエンジニアリングサービス」をご提供しています。本サービスは、お客さまのオフィスやデータセンター(オンサイト)に当社のITエンジニアが常駐し、インフラ構築から運用、業務アプリケーションの企画・開発、24時間365日のシステム監視・運用まで、ITビジネス全体をトータルでサポートします。
また当社は、TOPPANグループの一員として、情報セキュリティ管理への徹底した取り組みや、法令順守のための教育、啓発活動を積極的に行うなど、企業コンプライアンスが確立している点も特長と言えます。
ご要望に応じて、サーバーエンジニア、クラウドエンジニア、ネットワーク/セキュリティエンジニア、アプリケーションエンジニア、システム運用管理者、システムオペレーターといった各分野の経験豊富なエンジニアが、お客さまのビジネス課題を確かな技術力で支援します。

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07.まとめ

ITアウトソーシングは、変化の激しい経営環境において自社の競争力を高める有効な経営手段です。ITのプロフェッショナルを外部パートナーとして活用することで、自社のコアビジネスへ経営資源を集中でき、業務効率化や品質向上、リスクコントロールなど、さまざまなメリットを享受できます。
一方で、ノウハウ蓄積不足やベンダー依存、情報漏洩リスクといったデメリットも存在します。そのため、導入プロセスや運用体制を丁寧に構築し、信頼できるパートナーと連携して進めることが成功のポイントとなります。
ITアウトソーシングの導入をご検討の際は、ぜひ当社「ITエンジニアリングサービス」もご活用ください。お客さまの課題解決と次世代のIT戦略推進を全力でサポートいたします。

執筆者

TOPPANエッジITソリューション(株) コラム編集室

システム監視・運用、インフラ構築をはじめとした、IT専門企業のTOPPANエッジITソリューションでは、主にシステム運用、基盤構築に関するコラムを発信し、企業にお役立ていただきます。システムのクラウド化、運用のアウトソーシングなどの、ビジネスシーンで活用していいただければ幸いです。