システム運用監視とは? 監視対象・項目や進め方も解説

システム監視・運用

現代のビジネス環境では、ITシステムの安定運用が企業活動の根幹を支えています。しかし、システムが正しく稼働し続けるためには、常にその状況を把握し、異常が発生した際に迅速に対応するための「運用監視」が不可欠です。

本コラムでは、運用監視の基本概念から具体的な監視対象や方法論、注意点について解説します。

01.ITシステムの「運用監視」とは?

システムのダウンタイムや障害は業務や顧客満足度に直結するため、安定稼働の維持が重要です。
そこで登場するのが「運用監視」という概念です。運用監視は、システムが正常に動作しているかどうかを継続的に監視し、異常が検知された際に迅速に対応することで、システムの安定稼働を支える役割を果たします。

運用監視の概要

運用監視とは、ITシステムの動作状況やパフォーマンスを継続的に確認し、問題発生時に迅速に対応するプロセスを指します。

具体的には、ネットワーク、サーバー、データベース、アプリケーションなど様々な要素が監視対象となり、これらの状態を監視ツールや監視システムを使ってリアルタイムでチェックし、異常が発生した際にはアラート通知や適切な対処を行います。

運用監視の目的

運用監視の主な目的は、システムの安定稼働とパフォーマンスの最適化を図ることです。
具体的な目的としては以下のような点が挙げられます:

• 早期異常検知と対応
• パフォーマンスの最適化
• 可用性の確保
• データの保護
• 計画的なメンテナンス

ITシステムの「運用監視」とは?

02.ITシステムの運用監視における主な対象と項目

運用監視を効果的に行うためには、何を監視し、どの項目をチェックするべきかを明確にすることが重要です。

運用監視の対象と項目はシステムの特性や利用環境に応じて異なりますが、ここでは一般的に重要とされる主な対象と項目について説明します。

運用監視の主な対象

運用監視の対象には、システムを構成するさまざまな要素が含まれます。
以下に代表的な監視対象を挙げます:
• サーバー:CPU使用率、メモリ使用率、ディスク容量
• ネットワーク:トラフィック、帯域幅、ルーターやスイッチの状態
• データベース:クエリ応答時間、接続数、トランザクション数
• アプリケーション:応答時間、エラーレート、スループット
• セキュリティ:ログイン試行や失敗回数、ファイアウォールの状態

運用監視の主な項目

運用監視においては、各対象に対して具体的な監視項目を設定することが求められます。
以下に、代表的な監視項目を示します:
• CPU使用率:サーバーやデータベースのCPU使用率を監視し、高負荷状態の検知や対策を行います。
• メモリ使用率:メモリの使用状況を監視し、メモリリークやメモリ不足が発生しないようにします。
• ディスク容量:ディスクの空き容量を監視し、ディスクフルによる障害を防止します。
• ネットワーク帯域幅:ネットワークの帯域幅使用率を監視し、過負荷やトラフィックの異常を検知します。
• クエリ応答時間:データベースのクエリ応答時間を監視し、パフォーマンス低下を早期に発見します。
• エラーレート:アプリケーションのエラーレートを監視し、不具合や障害を即座に検知します。
• ログイン試行回数:セキュリティ監視として、不正ログイン試行回数を追跡し、攻撃の兆候を早期に把握します。

ITシステムの運用監視における主な対象と項目

03.運用監視を実施するための進め方

運用監視を効果的に実施するためには、適切な手順を踏むことが重要です。ここでは、運用監視を始めるための具体的なステップを解説します。

STEP① 監視対象と項目の選定

まずは、何を監視するのか、その対象と項目を明確にする必要があります。これは、システムの特性や業務における重要度に基づいて決めます。
• 業務の中で最も重要なシステムやアプリケーションは何か?
• 過去に多くの問題が発生した箇所はどこか?
• パフォーマンスのボトルネックとなりやすい部分はどこか?

これによって、優先的に監視すべき対象と項目を決定します。

STEP② 監視ツールの導入と設定

監視対象と項目が決まったら、それを効率的に監視するためのツールを選び、導入します。監視ツールには無料で利用できるものから、企業向けの高度なソリューションまで様々な種類があります。
• 必要な監視機能が含まれているか
• リアルタイムでの監視が可能か
• アラート機能やレポート機能が充実しているか

導入後は、監視対象や項目に応じた設定を行います。例えば、「CPU使用率が80%を超えた場合にアラートを出す」といった設定を行います。

STEP③ アラートと対応フローの整備

監視ツールの設定が完了したら、異常が検出された際にどのように対応するかのフローを整備します。これは、障害発生時に迅速かつ適切な対応を行うために重要です。
• 問題発生時にアラートを受け取る担当者を決める
• アラートの内容に応じた初期対応方法のマニュアル化
• 必要に応じて、問題をエスカレートする手順を決める(例:上司や専門チームに連絡する)

また、定期的に対応フローの見直しや訓練を実施し、実際の対応力を高めます。

STEP④ 監視データの解析と改善策の実施

監視を継続することで得られたデータを解析し、システムのパフォーマンスや安定性に関する傾向を把握します。
• サーバーの負荷分散:サーバーの負荷が高い時間帯を特定し、必要に応じてサーバーの数を増やすなどの負荷分散対策を行います。
• ネットワーク強化:ネットワークのボトルネックを解消するために、ネットワーク機器設定の調整・追加を行います。
• データベースの最適化:データベースに対するクエリの応答が遅い場合、インデックス追加やクエリのチューニングなどを行い、パフォーマンスを向上させます。
• リソースの適正化:システム全体のリソース使用状況を分析し、効率的な運用ができるようにリソースの配置や割り当てを見直します。

これにより、システムの信頼性や効率性を向上させることができます。

STEP⑤ 定期的な見直しと最適化

運用監視は一度設定すれば終わりではなく、定期的な見直しと最適化が必要です。システムの変更や業務要件の変化に伴い、監視の対象や項目、対応フローを適宜見直し、最適化を図ります。また、監視ツールのアップデートや新機能の導入も随時検討します。

これらのステップを踏むことで、効果的な運用監視を実現し、システムの安定稼働を維持することができます。次章では、運用監視における注意点について詳しく解説します。

運用監視を実施するための進め方

04.運用監視における注意点

運用監視を効果的に実施するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、運用監視を行う際に注意すべき点を詳しく解説します。

過度な監視の回避

監視する項目が多すぎるとシステムに負荷がかかり、逆にパフォーマンスが低下することがあります。また、不要なアラートが多発し、本当に重要なアラートを見逃してしまうリスクもあります。

重要な項目に絞って監視し、定期的に見直すことが重要です。

アラート疲れの防止

過剰なアラートは担当者に「アラート疲れ」を引き起こし、重大な警告を見逃す原因になります。

アラートの設定は適切な閾値を設け、優先順位を設定し、対応の優先度を明確にします。

適切な対応フローの整備

アラート発生時の対応フローが整備されていないと、迅速かつ適切な対応ができません。

フローを明確にドキュメント化し、担当者全員が理解していることを確認します。また、定期的に訓練を行い、実際の障害発生時にスムーズに対応できるようにします。

データの保護とプライバシーの確保

監視データには、システムの動作状況だけでなく、利用者の活動情報なども含まれることがあります。監視データの取り扱いには十分注意し、不正アクセスやデータ漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を講じます。また、利用者のプライバシーに配慮し、必要以上の情報を収集しないようにしましょう。

技術と業務のバランス

運用監視は技術的な側面だけでなく、業務的な側面も考慮する必要があります。システムが技術的に問題なく動作していても、業務上のニーズを満たしていなければ意味がありません。業務要件や運用体制に基づいて監視の設計を行い、適切なバランスを保ちます。

定期的なレビューと改善

運用監視は一度設定して終わりではありません。システムの変更や業務要件の変化に応じて、監視項目や対応フローを見直し、最適化を図ります。

定期的なレビューを行い、継続的な改善を実施しましょう。

運用監視における注意点

05.まとめ

運用監視は、システムが日々正常に稼働しているかを常にチェックし、問題が発生した際には迅速に対応するための仕組みです。これにより、システムのダウンタイムを最小限に抑え、業務の継続性を確保することができます。さらに、得られたデータを活用してシステムのパフォーマンスを最適化し、リソースを効率的に利用することで、コスト削減やビジネスの成長を促進することが可能です。

しかし、効果的な運用監視を実現するためには、適切なツールの導入や設定、アラート対応のための整備、データ解析による改善策の実施など、多くのリソースと専門知識が必要です。特に中小企業や専任のIT担当者がいない企業にとっては、この体制を自社で整えることは容易ではありません。

当社の「リモート監視・運用サービス」は、セキュリティ拠点「ITサポートセンター」からお客さまのシステムの監視・運用を行うサービスです。クラウドファーストの市場環境に適応し、特にクラウドでサービスを運用されるお客さまにとって、最適なシステム監視サービスを提供します。
お気軽にお問い合わせください。

執筆者

TOPPANエッジITソリューション(株) コラム編集室

システム監視・運用、インフラ構築をはじめとした、IT専門企業のTOPPANエッジITソリューションでは、主にシステム運用、基盤構築に関するコラムを発信し、企業にお役立ていただきます。システムのクラウド化、運用のアウトソーシングなどの、ビジネスシーンで活用していいただければ幸いです。