クラウドとは?意味や概念など基本から分かりやすく解説

近年、クラウド技術はIT業界に革新をもたらし、企業や個人の生活に欠かせないものとなっています。しかし、「クラウド」という言葉を聞いても、具体的にどのようなものなのか、どうして重要なのかを正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。そこで本コラムでは、「クラウドとは何か?」という基本的な問いから、その意味や概念、そしてクラウド技術の利用方法までを分かりやすく解説します。
目次
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01.クラウドとは?
クラウドの概要
クラウドとは、インターネットを通じて提供されるコンピュータ資源やサービスのことを指します。「クラウド(Cloud)」という言葉は、実体を持たずどこにでもある「雲」をイメージさせることから名付けられました。具体的には、クラウドを利用することで、企業や個人は物理的なサーバーやストレージ、アプリケーションを手元に持つ必要がなく、必要なときに必要な分だけ、オンラインでリソースを利用できるようになります。
クラウドサービスは、ストレージサービス、アプリケーション提供、リソースの貸し出しなど、多岐にわたります。これにより、ビジネスから日常生活に至るまで、多くの場面で効率化やコスト削減が可能となっています。
クラウドの目的
クラウドが目指す最大の目的は、コンピューティングリソースの効率的な利用と利便性の向上です。従来のIT環境では、サーバーやネットワーク設備を自社で管理・運用する必要があり、大きなコストや運用の負担が課題となっていました。一方、クラウドでは、これらの設備をサービス提供者に任せることで、ユーザーは自分の業務に集中することができます。
また、クラウドは柔軟性に優れており、必要に応じてリソースを増減できる「スケーラビリティ」や、どこからでもサービスにアクセスできる「モビリティ」を提供します。このため、初期投資を抑えつつ、変化の激しいビジネス環境に即座に対応できる仕組みとして、多くの企業にとって重要な基盤となっています。
クラウドが生まれた背景
クラウドコンピューティングの概念は、1997年に南カリフォルニア大学のラムナト・チェラッパ教授によって提唱されました。
さらに、2006年にはGoogleの当時のCEOであったエリック・シュミット氏が「クラウドコンピューティング」に言及したことで注目を集め、クラウドが世の中に普及するきっかけとなりました。
その後、クラウドコンピューティングはインターネット技術の発展と共に急速に普及していきました。
02.クラウドの種類
クラウドコンピューティングにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる目的や用途に応じて利用されています。ここでは、代表的な3つの種類について詳しく説明します。
SaaS(サース:Software as a Service)
SaaS(サース)は、クラウドサービスの一形態で、ソフトウェアをインターネット経由で提供するモデルを指します。従来のソフトウェアは、ユーザーが自分のPCやサーバーにインストールして使用するものでしたが、SaaSでは、サービス提供者がソフトウェアをクラウド上で運用し、ユーザーはウェブブラウザや専用アプリを通じてアクセスします。
SaaSの代表的な例として、Google Workspace(旧G Suite)やMicrosoft 365などが挙げられます。これらは、メール、スケジュール管理、ドキュメント作成などの機能をオンライン上で提供し、どこからでも利用可能です。SaaSのメリットは、初期導入コストが低いことや、ソフトウェアのアップデートが自動で行われるため、管理の手間を大幅に削減できる点にあります。
PaaS(パース:Platform as a Service)
PaaS(パース)は、アプリケーション開発に必要なプラットフォームをクラウド上で提供するサービスです。開発者は、インフラの管理や運用を気にすることなく、提供された環境でアプリケーションの設計、構築、デプロイが行えます。
PaaSの典型的な例として、Google Cloud Platform(GCP)やMicrosoft Azure App Serviceなどがあります。これらは、開発ツール、データベース、サーバー環境を一括して提供し、プログラミングやアプリケーションの管理に集中できる環境を整えています。PaaSは、特にスタートアップや開発期間が短いプロジェクトにおいて重宝されるクラウド形態です。
IaaS(イアースまたはアイアース:Infrastructure as a Service)
IaaS(イアースまたはアイアース)は、サーバー、ストレージ、ネットワークといったITインフラをクラウド上で提供するサービスです。ユーザーはクラウドを通じてリソースをレンタルし、必要に応じて自由にスケーリングできます。
IaaSの代表例には、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などがあります。これらのサービスでは、ユーザーが自分の用途に応じた仮想サーバーを簡単に構築でき、必要に応じてリソースを増減できます。IaaSは、システム設計やカスタマイズの自由度が高く、大規模なITインフラを構築する企業や、特定のニーズに対応したシステムを開発する際に適しています。
03.クラウドの具体例
クラウドサービスはさまざまな分野で利用されており、私たちの日常生活やビジネスにおいて重要な役割を果たしています。以下に、代表的なクラウドサービスをいくつかのカテゴリに分けて紹介します。
コミュニケーションツール
クラウドを利用したコミュニケーションツールは、ビジネスや個人間の円滑なやり取りを支える重要なサービスです。これらのツールは、インターネットを通じてリアルタイムでメッセージやファイルを共有でき、リモートワークやチームのコミュニケーションを支援するために広く利用されています。
以下はその一例です。
Microsoft Teams
チャット、ビデオ会議、ファイル共有、アプリの統合など、包括的なコラボレーション機能を提供するツール。Office 365と連携して利用することが多いです。
Zoom
ビデオ会議やウェビナー、オンラインイベントの開催に特化したツール。高品質なビデオと音声、画面共有機能が特徴です。
データ共有
データ共有は、クラウドサービスが提供する最も重要な機能のひとつです。
企業や個人が膨大なデータを効率よく保存・共有・共同編集できるようにするため、クラウドストレージサービスが活用されています。ドキュメント、画像、動画などのファイルをクラウドにアップロードすることで、インターネットが使える環境ならどこからでもアクセスできるようになります。
以下はその一例です。
Google Drive
Googleが提供するクラウドストレージサービス。ドキュメント、スプレッドシート、スライドなどのファイルを保存し、他のユーザーと共有して共同編集が可能です。
Dropbox
ファイルの保存と共有に特化したクラウドストレージサービス。シンプルなインターフェースで、異なるデバイス間でのファイル同期がスムーズに行えます。
OneDrive
Microsoftが提供するクラウドストレージサービス。Office 365と統合されており、Word、Excel、PowerPointなどのファイルをオンラインで編集・共有できます。
クラウドストレージ
クラウドストレージは、データをインターネット上のサーバーに保存するサービスで、個人や企業にとって非常に重要な役割を果たしています。クラウドストレージの利点は、デバイス間でデータをシームレスに同期でき、外出先でも重要なファイルにアクセスできる点です。また、バックアップ機能により、万一デバイスが故障した場合でもデータが失われるリスクを最小限に抑えられます。
以下はその一例です。
Amazon S3
Amazon Web Services(AWS)が提供するオブジェクトストレージサービス。大容量データの保存と高い可用性が特徴です。
Google Cloud Storage
Google Cloud Platformが提供するストレージサービス。スケーラブルで信頼性の高いデータ保存が可能です。
Microsoft Azure Blob Storage
Microsoft Azureが提供するオブジェクトストレージサービス。大規模な非構造化データの保存に適しています。
クラウドベースのアプリケーション開発
クラウドベースの開発プラットフォームでは、必要なリソースをすぐに利用できるため、開発者はサーバーのセットアップや環境構築に時間をかけることなく、すぐに開発作業を開始できます。また、リソースの調整が容易で、アプリケーションの需要が増加した際には自動的にリソースを追加して対応することができるため、パフォーマンスの低下を防ぎ、利用者は快適に使い続けることができます。
以下はその一例です。
Heroku
開発者がアプリケーションを迅速にデプロイし、管理できるPaaS。さまざまなプログラミング言語に対応しており、自動スケーリングやアドオンの利用が可能です。
Google App Engine
Google Cloud Platformが提供するPaaS。スケーラブルなアプリケーションの開発とデプロイが簡単に行え、Googleのインフラを活用することで高いパフォーマンスと信頼性を提供します。
AWS Elastic Beanstalk
Amazon Web Servicesが提供するPaaS。アプリケーションのデプロイ、管理、スケーリングを自動化し、インフラの設定や管理を簡素化します。
04.クラウドのメリット
クラウドの具体的なメリットを知ることで、より効果的な活用が可能となります。以下に、クラウドの主なメリットをいくつか紹介します。
導入や維持にかかるコストを抑えやすい
クラウドサービスの大きなメリットのひとつは、導入や維持にかかるコストを抑えやすい点です。
従来のオンプレミス型のシステムでは、ハードウェアの購入やメンテナンス、運用にかかる人件費など、初期投資が非常に高額になることがあります。対して、クラウドサービスは、インターネットを通じてサービスを利用するため、物理的なサーバーやストレージを自前で準備する必要がありません。
このため、初期投資を大幅に削減でき、運用コストも定額制や従量制で支払えるため、予算の見通しが立てやすくなります。また、サーバーやネットワーク機器の保守費用もクラウドプロバイダーが負担するため、企業側のコストは非常に低く抑えられます。
柔軟性と拡張性が高い
クラウドサービスは、柔軟性と拡張性が高いため、企業の成長や変化に対応しやすいという特徴があります。
例えば、事業が拡大してリソースが必要になった場合、クラウドサービスでは必要なリソース(サーバー容量やストレージ容量)を瞬時に追加できます。これにより、インフラを追加するための大規模な投資や工事が不要となり、急速なビジネスの拡大にも対応可能です。逆に、リソースが過剰であれば縮小することも容易にでき、無駄なコストを削減できます。
オンプレミス環境では、こうした柔軟なリソース管理が難しく、余分な設備投資や運用費がかさむことがありますが、クラウドではこのような心配をせずに、必要に応じたスケーリングを行うことができます。
災害対策としてのバックアップ機能
クラウドサービスには、災害対策としてのバックアップ機能が備わっていることが多く、企業にとって非常に重要な利点です。
自然災害やシステム障害が発生した際、オンプレミス環境ではバックアップが失われるリスクがありますが、クラウドではデータが異なる場所に分散して保存されているため、災害発生時でもデータ損失を最小限に抑えることができます。
例えば、AWSのS3レプリケーション機能を使用すると、オブジェクトを別のS3バケットに自動で非同期的にコピーできるため、災害が発生しても別の地域から迅速にデータを復元することができます。これにより、企業は業務を中断することなく、事業の継続性を確保できます。
リモートアクセスとチームワークの向上
クラウドサービスのもう一つの大きなメリットは、リモートアクセスとチームワークの向上です。
クラウド環境では、インターネット接続さえあれば、どこからでも必要なデータやアプリケーションにアクセスできます。これにより、従業員はオフィスにいる必要がなく、自宅や出張先からでも業務を遂行することが可能です。特に、リモートワークや在宅勤務が普及している現代において、クラウドサービスは柔軟な働き方を支援します。
また、クラウド上でのデータ共有や共同編集が容易になるため、チームメンバーがリアルタイムで協力しやすくなります。例えば、GoogleドキュメントやMicrosoft Office 365のようなクラウドベースのツールを使用すれば、複数人が同時に文書を編集でき、コミュニケーションの効率が飛躍的に向上します。
アップデートやセキュリティ対策が自動で行われる
クラウドサービスでは、システムのアップデートやセキュリティ対策が自動的に行われるため、企業はこれらの作業に割くリソースを削減できます。
クラウドプロバイダーは定期的にセキュリティパッチを適用し、最新のソフトウェアを提供することで、企業が手動でこれらの作業を行う手間を省きます。また、セキュリティの強化が常に行われているため、最新の脅威にも迅速に対応できます。オンプレミス環境では、セキュリティ対策を手動で行う必要があり、常に最新の状態を保つことが難しいこともありますが、クラウドサービスではこれらの管理が一括して行われるため、企業は安心してサービスを利用することができます。
05.クラウドのデメリット
クラウドには多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。以下にその主なデメリットを紹介します。
依存度の高さ
クラウドサービスに依存することで、プロバイダーのシステム障害やサービス停止が発生した場合に、業務に重大な影響を及ぼす可能性があります。
特に、ミッションクリティカルな業務をクラウドに依存している場合、プロバイダーのサービス品質や信頼性が重要な要素となります。
企業は、複数のクラウドプロバイダーを利用するなど、リスク分散の対策を講じることが求められます。
カスタマイズの制約
クラウドサービスは、一般的に標準化されたプラットフォームを提供しているため、特定の企業のニーズに合わせたカスタマイズが難しい場合があります。
特に、特殊な業務プロセスや独自のシステム要件を持つ企業にとっては、クラウドサービスの機能が十分に対応できないことがあります。企業は、自社のニーズに最適なクラウドサービスを選定し、必要に応じてカスタマイズ可能な範囲を確認することが重要です。
06.まとめ
クラウドサービスは、企業にとって数多くのメリットを提供する一方で、いくつかのデメリットも存在します。コストの削減、柔軟性、拡張性の高さ、システムの信頼性や災害対策としてのバックアップ機能など、クラウドがもたらす利点は計り知れません。一方で、情報漏えいやクラウドプロバイダーへの依存によるシステム障害など、リスクを無視することはできません。よってクラウドのメリットを最大限活かすためには、適切なクラウドの監視・運用を行うことが大変重要となります。その場合、監視・運用の専門的な技術を有する企業に運用業務全般をアウトソーシングすることも、選択肢のひとつです。
当社「リモート監視・運用サービス」は、セキュリティ拠点「ITサポートセンター」からお客さまのシステムの監視・運用を行うサービスです。クラウドファーストの市場環境に適応し、特にクラウドでサービスを運用されるお客さまにとって、最適なシステム監視サービスを提供します。
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クラウド環境でサービスを運用するお客様に最適な機能を備えており、クラウドの動的なリソース管理にも対応します。スケーラビリティを活かした監視を行い、リソースの自動拡張や縮小に合わせた負荷管理が可能です。また、現在オンプレでシステム運用を行っているお客さまに、クラウド基盤構築の支援も行います。クラウド基盤構築から監視・運用まで一貫したサポートで、お客さまのビジネス変革に貢献します。 - 継続的なサポートと改善提案
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