クラウド移行とは?メリットから手順まで基礎知識をまとめて解説

目次
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01.クラウドシステムとは
クラウドシステムの概要
クラウドシステムとは、インターネットを通じてコンピューティングリソースを提供するサービスの総称です。従来のオンプレミス型のシステムとは異なり、ユーザーは物理的なサーバーやストレージを自前で用意する必要がなく、必要に応じてリソースを柔軟に利用できます。クラウドシステムは主に3つのサービスモデルに分類されます。
(1)IaaS(Infrastructure as a Service)
クラウド上の基本的なコンピューティングリソース(仮想マシンやストレージ、ネットワーク機能)を利用できるサービスです。
(2)PaaS(Platform as a Service)
クラウド上のアプリケーションの開発・実行環境といったプラットフォームを利用できるサービスです。開発者はインフラの管理を意識することなく、アプリケーションの開発に専念できます。
(3)SaaS(Software as a Service)
完成されたソフトウェアアプリケーションをインターネット経由で利用できるサービスです。ユーザーはソフトウェアをインストールする必要がなく、ブラウザを通じて利用できます。代表例としては、Google WorkspaceやMicrosoft 365などがあります。
クラウドとオンプレミスの違い
オンプレミスとは、企業や組織が自社でサーバーやネットワーク機器を設置し、管理・運用するシステム形態のことを指します。データやアプリケーションは自社内に保管され、セキュリティやカスタマイズの自由度が高いという利点があるものの、初期導入コストや運用・保守の負担が大きく、専門知識が必要となるデメリットがあります。
一方、クラウドシステムはインターネットを通じて外部のサービスプロバイダーが提供するリソースやサービスを利用するため、柔軟性が高く、必要に応じてリソースをスケールアップやスケールダウンできるため、初期投資を抑えつつ迅速にシステムを導入できます。
02.クラウド移行とは
クラウド移行とは、企業や組織が自社のIT資産(データ、アプリケーション、インフラストラクチャなど)をオンプレミス環境からクラウド環境に移行するプロセスを指します。クラウド移行には、以下に記載したいくつかの手法があり、既存のオンプレミス環境によって適切な方法を選択します。
リホスティング(Rehosting)
既存のアプリケーションをそのままクラウドに移行する方法になります。短期間で移行できますが、最適化が行われないため、パフォーマンス向上は期待できないというデメリットがあります。
リファクタリング(Refactoring)
アプリケーションをクラウドに最適化するために再設計する方法で、クラウドの特性を活かした新機能追加やパフォーマンス向上が可能となります。
リバイス(Revise)
アプリケーションのコードやアーキテクチャーを見直し、クラウドの特性を活かすように改善します。一度の移行で終わらずに、継続的にアプリケーションを改善していくプロセスを含みます。
リビルディング(Rebuilding)
アプリケーションをゼロから再構築する方法で、最新の技術やアーキテクチャーを採用できますが、コストと時間がかかるという課題もあります。
リプレース(Replace)
既存のアプリケーションを新しいクラウドサービスに置き換える方法です。既存のシステムを廃止し、クラウドネイティブなソリューションを導入することができます。
03.クラウド移行のメリットとデメリット
クラウド移行のメリット
(1)柔軟性と拡張性
クラウドはリソースをオンデマンドで利用できるため、需要に応じて柔軟に拡張することができます。これにより、急激なトラフィックの増加や、ビジネスの成長に則した、システムの拡張への対応が可能になります。
(2)コスト効率性
クラウドは、オンプレミスのシステムで必要となるハードウェアの購入やメンテナンス、OSなどのアップグレードのコストが発生しないため、オンプレミスのシステムに比較してコスト効率性が高いと言えます。また、従量課金制度により必要なだけのリソースを使用するため、無駄なコストがかかりにくいという利点もあります。
(3)高い可用性と信頼性
多くのクラウドプロバイダーは世界中にデータセンターを持ち、冗長性を確保しています。これにより、高い可用性と信頼性を提供し、システムの停止時間を最小限に抑えることができます。
(4)最新の技術へのアクセス
クラウドプロバイダーは人工知能(AI)、機械学習、ブロックチェーンなど、常に最新の技術を導入しており、その恩恵を受けることができます。また、定期的にシステムのアップデートやメンテナンスを行い、サービスの安定性やパフォーマンスを向上させており、ユーザーは常に最新の状態でサービスを利用することができます。
クラウド移行のデメリット
(1)セキュリティとプライバシー
クラウドシステムではデータがインターネット経由でアクセスされるため、外部インターネット環境から遮断したオンプレミスシステムに比較すると、不正アクセスや情報漏洩の懸念があります。また、セキュリティはクラウドプロバイダーに依存するため、それらプロバイダーのセキュリティポリシーの見極めと、適切なセキュリティ対策が必要です。
(2)システム依存度の高さ
クラウドプロバイダーに依存することで、別システムへの移行の難しさが発生する可能性があります。また、プロバイダーの価格変更やサービスの変更によって、ビジネスに影響を及ぼすリスクもあります。
(3)データの所有権と法的規制
クラウドシステムではデータが外部のサーバーに保存されるため、データの所有権や法的規制に関する問題が生じる場合があります。特に個人情報や機密情報の取り扱いには法的規制が厳しく、コンプライアンスの遵守が求められます。クラウドプロバイダーのサービス利用規約に留意し、利用することが必要です。
これらのメリットとデメリットを理解し、ビジネスのニーズや要件に合わせて適切なクラウド戦略を策定することが重要です。
04.クラウド移行の手順
オンプレミスのシステムからクラウドに移行する際の具体的な手順は以下の通りです。移行の計画は、組織のニーズやシステムの複雑さによって異なる場合がありますが、一般的な流れを示します。
現状分析とニーズの特定
クラウド移行に向けては、最初に、現状分析を行います。現在のオンプレミスシステムや業務プロセスを詳細に把握し、どのような課題や問題点が存在するかを洗い出します。その際、利用者に対しインタビューを行い、現状の課題や要望のヒアリングと、セキュリティやコンプライアンスの観点で、現状のシステムを評価し、問題点を把握します。また、ログデータなどの分析を通じて、システムの利用状況や課題を把握します。
次に、ニーズの特定を行います。利用者から得た情報を整理し、具体的な要件を洗い出します。その際、システムに求められる機能要件(機能面での要求)と非機能要件(性能やセキュリティなどの要求)を整理する事が必要です。今後のビジネス目標や戦略に合わせて、システムがどのような役割を果たすべきかを定義し、クラウドサービスを提供するベンダーやコンサルタントと相談のうえ、最適なクラウド移行の方針を決定します。
適切なクラウドサービスの選定
ビジネスニーズの明確化、機能/非機能要件やセキュリティポリシーを定義した後、導入を検討するクラウドシステムの評価を行います。
複数のクラウドサービスプロバイダーを比較し、どのようにセキュリティを確保しているか、という観点での信頼性や、サポート体制、SLA(サービスレベル契約)の内容などを評価します。導入およびランニングコストが予算内に収まるか、概算費用をベースとした評価も行います。この場合隠れたコストや、将来的な拡張に伴うコストも考慮する必要があります。
次に、既存データの移行方法や運用体制を検討し、クラウドサービスの選定に影響する要素を考慮します。複数の候補を絞り込んだ後、パイロット導入を行い実際に試用してみて、適切なクラウドサービスを選定します。
クラウド移行の予算とROI(投資収益率)の計算
概算コストを洗い出した後、導入にかかる詳細の初期コスト(ライセンス料、導入コンサルティング費用、データ移行費用など)およびランニングコスト(月額料金、データ転送料金、サポート料金など)を洗い出します。この際、将来的なスケーリングや追加機能の導入に伴うコストも考慮します。その上で、現状のシステム運用の費用と比較します。
上記の全てのコストと、導入によって見込まれる効果(効率化、生産性向上、コスト削減など)を考慮して、ROIを計算します。(ROI = (収益 - コスト) / コスト × 100)
具体的には、導入によって見込まれる収益(売上向上、コスト削減、生産性向上など)を算定し、ROI計算に反映します。また、導入に伴うリスク(システム障害、データ漏洩など)を想定し、ROI計算にリスク要素を加味します。
クラウドシステムの設計と構築
まず始めに、クラウドシステムの要件定義を行います。ユーザーや関係者の要件を整理し、システムがどのような性能を持つべきかを明確にします。次に、クラウドサービスの機能やリソースを最適に活用するための、システムのアーキテクチャー設計を行います。この際、システム運用というゴールを見据え、そこから逆算し、効率的でコストを抑えた運用が可能となる、設計を行うことが重要です。
また、選定したクラウドプロバイダーの環境で、必要な仮想マシンやストレージなどのシステム基盤 を構築し、クラウド内部および外部との通信を可能とする、セキュアなネットワーク環境を設定します。さらに、データのバックアップと災害復旧計画を策定し、システムの可用性と信頼性を確保します。システムに必要なアプリケーションの開発に際しては、クラウドネイティブなアプリケーション開発や、既存のアプリケーションの移行を考慮しながら実施します。
その後、システムのテスト計画を策定し、機能テスト、パフォーマンステスト、セキュリティテストなどを実施、システムを本番環境に展開し、運用準備を行います。本番運用に向けて、ユーザトレーニングや運用マニュアルの作成も行います。
クラウド移行におけるデータ移行と統合
データ移行とは、既存のデータを新しいクラウドシステムに移行する工程を指し、以下のステップで実施します。まず、データの品質を向上させるための、データの整理とクレンジング(不要なデータの削除)を行います。次に、 既存のデータのフォーマットや構造を新しいシステムに適した形式に変換するマッピング作業を行います。その後、データ移行の前にテストを行い、データの整合性や正確性を確認します。
一方、データ統合は、複数のソースからデータを取り込み、統合して一元化するプロセスです。データの重複や不整合を避ける点に注意しながら、複数のデータソースからデータを取り込みます。その際、マスターデータの一元管理を行い、データの正確性と整合性を確保します。統合されたデータは一貫した形式に整えることで、分析やレポーティングがしやすくなります。
これらの手順を参考にしつつ、具体的な状況に応じた詳細な計画を立てることが重要です。移行プロジェクトは複雑な場合が多いため、専門家の支援を受けることも検討してください。
05.クラウド移行の注意点
オンプレミスのシステムからクラウドへの移行には多くの利点がありますが、成功させるためにはいくつかの注意点があります。以下に、主な注意点を詳しく説明します。
セキュリティとコンプライアンス
クラウドに移行するデータが機密情報を含む場合、適切な暗号化やアクセス制御を実施する必要があります。また、 業界の規制(GDPR、HIPAAなど)や社内ポリシーに準拠するため、クラウドプロバイダーのセキュリティ対策を確認します。
データ移行の計画
移行中にデータが損失したり、破損したりしないように、データのバックアップと整合性チェックを行います。その際、オンライン転送とオフライン転送(物理メディアを使用)を含む複数の手法を検討します。
コスト管理
クラウドの利用料金は使用量に基づくため、移行後のコストを正確に予測し、予算を管理する必要があります。使用しないリソースが発生しないように、定期的にリソースを監視し、最適化します。
トレーニングとサポート
クラウド環境に移行する際、スタッフが新しいシステムやツールを使いこなせるようにトレーニングを行い、移行後の運用をサポートするための体制を整えます。
移行の段階的実施
全てを一度に移行するのではなく、まずは小規模なパイロットプロジェクトを実施して、問題点を洗い出します。システムやアプリケーションを段階的に移行し、各ステップでテストを行いながら進めます。
モニタリングとフィードバック
移行後は、システムのパフォーマンスや可用性を継続的に監視します。ユーザーからのフィードバックを収集し、必要に応じて改善策を講じます。
これらの注意点を考慮しながら、計画的に移行を進めることで、クラウドへの移行を成功させることができます。
06.まとめ
クラウド移行を成功させるためには、注意点を押さえながら適切な手順に沿って進めることが重要です。
当社では、お客さまのご要件に応じた新規のクラウド基盤構築や、オンプレミスで運用しているお客さまの基盤のクラウド移行など、多数の実績があり、高品質の「システム基盤構築サービス」をご提供します。
また、当社が強みを持つシステム運用というゴールを見据えた設計・構築も特長です。これにより、運用フェーズでのコスト削減につながり、お客さまのビジネス成長に貢献することができます。
システム基盤構築サービスの特長
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